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アブノーマルなプレイ 鼻腔の被虐に溺れて |
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刺激を追い求めて悪魔のプレイに眈溺してしまう私達… この、いまわしい性癖は、地獄に堕ちて焦熱の劫火に、 焼きつくされなければ、治らないのでしょうか…? |
背中の右手首の上に、左の手首が重ねられ縄は、両方の手首にきつくくいこんでキリキリと固く巻きしめられてゆきます。手首にくいこむ縄の感触! 次に、二の腕にも二重三重と縄がかけられ、さらに乳房の上と下にまわされて、うしろ手の結び目と一つにされますと、もうどんなにもがいても、ビクともしません。もう、何をされてもどうしようもない、という無力感から、私は、すっかり諦観の気持に浸ってしまうのでございます。 『立て!』 うしろ手の縄尻をとられて引き立てられ、窓際の、机の前に正座させられました。 机の高さは、正座している私の顔の高さとちょうど同じぐらいで、その机の上には、牛乳をいっぱいに満たした、900t入りの大きな、牛乳ビンが置いてあるのです。そして私の右側のゆかに、同じ大きさの牛乳ビンが、これは空のまま置かれました。これから、恐ろしい牛乳責めがおこなわれるのです。 『さあ、顔を仰向けるんだ』 夫の手が私の髪の毛をつかみ、グイッと乱暴に顔を仰向かされました。 |
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ムリヤリに仰向かされた顔を、動けないように抱えられて、両方の鼻の孔に、ビニール管が、しっかりと挿しこまれてしまいました。このビニール管は、長さ50糎、直経が一糎ぐらいで、私の鼻孔よりやや太目のうえ、端の内側に、まるい針金の輪がはいっていて瑞がふくれておりますので、鼻孔にピッチリとはめられてしまいますと、少し引いたぐらいでは、なかなか抜けなくなってしまうのでございます。 左側の鼻孔にさしこまれたビニール管の先が、机の上の牛乳ビンに入れられました。 『さあ、鼻の奥をしっかり閉じるんだよ』 夫は命じました。絶対服従を誓っている私は、咽頭に力を入れて、鼻の奥をしっかりと閉じました。 夫が右側のビニール管の先を、口で強く吸いますと、ビンの中の牛乳はビニール管に吸いあげられ、鼻腔の奥をとおって、右側のビニール管に流れこみます。そのビニール管の先を、ゆかに置かれた牛乳ビンの中に入れて手がはなされますと、牛乳は、二つのビンの高さの差によって、低い方のビンに勢いよく流れはじめました。 目の前の、ビンの中の牛乳が、目に見えてグングン減ってゆきます。 『アッ、アッ、アッ……』 私は、思わず声をあげてしまいました。なんという責苦! そして、なんという屈辱でしょうか。嫌悪感と快感の、いり混じったなんともいえない不恩義な感覚が、私の全身をつらぬきました。 『どうだ、いい感じだろう』 『ウウウ……ゆるして……』 私は、うしろ手に縛られた不自由な体をよじって、切なく身をもだえました。 机の上のビンの牛乳が、だんだん少なくなって、もう少しでなくなる、という寸前に、すばやくビンが下にさげられて、代りに、下の牛乳がいっぱいになった方のビンが、机の上にあげられます。すると、牛乳は今度は逆に、右側の鼻盤から左側め鼻腱へと流れるのでございます。 皆さま方のなかには、プールなどで泳いだ際に、なにかのはずみで、鼻に水がはいって痛い思いをなさった経験が、おありのことと思います。実際、真水が鼻にはいりますと、粘膜が刺激されて、すこし痛いものですけれども、体温ぐらいに暖められた牛乳は、どういうわけか、鼻腔の粘膜に、まったく刺数や痛みを感じないのです。 ただ、目の前のビンの中の牛乳が、みるみるうちに減って、下のビンの牛乳が増えてゆきますので、牛乳が鼻の奥をとおって流れていることが分かるだけなのでございます。 ですから、鞭打ちや、くすぐり責めのような苦痛はありませんが、目の前のビンの牛乳が、グングン減ってゆく有様を、まざまざと見せられるのは、視覚を刺激して、精神的に、すごく苛められている──という気持がいたします。陶体的苦痛よりも、羞恥と屈辱を味あわされる精神的苦痛の方が、はるかに大きいのでございます。 うしろ手首や、胸にきつくくいこみ、たえず縮めつけ続ける縄の緊縛感! 両方の鼻の孔に、無惨にビニール管をさしこまれて鼻を貴められる屈辱感! しかし、それらがいつしか、快い被虐の陶酔となって、燃えあがってくるのでございます。 息をはずませ、せつない呼吸をつづけながら、だんだん喘いでくる嵐の表情を、夫は注意ぶかく見つめながら、さらに、言葉によるいたぶりを始めました。 『さあ、お前のいまの状態を説明しなさい』 『ハ、ハイ……私は両手をうしろ手に、きびしく縛りあげられております』 『うん、それから──』 『両方のお鼻に、ビニールの管を入れられて牛乳を、とおされて責められています』 『そうか、牛乳責めは苦しいか? それとも楽しいか?』 『……』 『どうなんだ! 返事をしないか』 『ハイ、とても苦しいです。でも──苦しいけれども、いい気持です』 鼻腔を、まったく塞がれておりますので、正確な発音はできませんけれども、こうした言葉によるいたぶりで、私はますます深く、被虐の渕にしずんでしまうのでございます。 『ああ……もう……ゆるして!』 私は、まるで気が遠くなるような、ウットリとした感覚に坐っていられなくなってしまい、縛られたままの体で、フラフラと横に倒れかかりました。 『まだまだ! ちゃんと坐って』 夫のはげしい叱声に、私は、ハッと我にかえって坐りなおしました。 私の顔の、まん中にそびえている、肉づきの豊かな、白い恰好のよい鼻──。美貌の誇りであり、自尊心を代表する大切な鼻を、このように残酷に責められて、私は、マゾヒスチックな悦びに浸りながら、この残酷なお仕置が永久につづくことを願い、被虐的ムードに陶酔するのでした。 夫が上のビンを持って高くさしあげ、2つのビンの間隔がいっぱいに開きますと、牛乳は早いスピードで、グングン流れ、ビンの高さが近づけられますと、牛乳の流れは、ゆるやかになってまいります。夫は、私の顔をじっと見つめながら、両手に二つのビンを持って牛乳の流れを自由自在に調節して、表情の変化を楽しむのでございます。 水道の蛇口をひねったときに、よく、ガタンガタンと大きな音がすることがございますでしよう。どうしてこういう現象がおきるのか、くわしい理由は分かりませんけれども、牛乳責めをされている時にも、二つのビンの高さの開係で、ときどき、これに似た状態になることがありますのよ。 そのときには、鼻腔の中が、ちょうどマイナスの圧力になったような感じになります。そして、ビニール管や鼻翼をビクンビクンと激しくふるわせ、牛乳の流れが、脈をうって遅く間歇的になるのです。しかし、この現象も、二つのビンの高さが変えられますと、なくなって、もとのように、スムースに流れるようになります。 こうして、私の鼻腔を右から左へ、左から右へ、牛乳は何回も何回もとおされて、牛乳責めは、いつ終わるともなく続けられたのでごいます。責めぬかれ苛めぬかれて、私はもう息も絶え絶えになってしまいました。 『あなた……もうかんにんして下さい』 『そうか。では今日は、このくらいにして、許してやろう』 牛乳が全部捨てられると、あらかじめ用意された、これも体温ぐらいに暖められた薄い食塩水がビンに入れられ、牛乳をとおされたときと同じように、私の鼻腔を右から左へ、左から右へ、何回もとおされて、入念な洗滌がおこなわれるのでございます。 耳鼻咽喉科のお医者さまで、鼻洗滌の治療をうけられた方は、よくご存知と思いますがぬるま湯ぐらいにあたためられた薄い食塩水は、牛乳とおなじように、鼻腔の粘膜をまったく刺激しないのです。 洗滌液がうすく濁ってまいりますと、新しい食塩水にとりかえられて、洗滌がつづけられ、数回のとりかえで、殆ど透明になってまいりました。 『大分きれいになって来たようだ。もうだいじょうぶかな──』 しかし夫の、その言葉が終わらないうちにどこかの副鼻腔にでも入っていたものでしょうか、食塩水のために、なかば固まりかけた真白な牛乳が、大きなかたまりになって、ドロリと出てまいりました。 『まだまだ、掃除をしなければいけないな』 それから、また暫く洗滌が続けられましたが、その後は、もう牛乳のかたまりは出てまいりませんでした。 両方の鼻の孔からビニール管がひき抜かれて、牛乳責めは、ようやく終わったのです。うしろ手の縛しめをとかれて、私は畳の上にグッタリとのびてしまいました。責めぬかれて身動きするのさえけだるい、甘い疲労感に私は放心したように、暫くの問、夢現の境を逍遙していたのでございます。 |
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── <二> ── |
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私を、すっかりMに育てあげてしまった夫は、こんどは新しい刺激を求めて、アヌス責めや、逆さ吊りや、ハリツケなどの責めを、次々と行なうようになってゆきました。夫の奴隷になり、縛られ責め苛まれることに悦びを感じる女に生まれ変わった私は、それらの新しい責めをも、抵抗なくうけ入れてゆきました。そして、次第にアブノーマルの泥沼に深く落ちこみ、めくるめくようなマゾヒズムの世界に恥溺していったのでございます。 新しく行なわれたそれらの、色々な責めのなかでも、特に私の嗜好に叶ったのは、A責めでございました。 三月号の『ハリツケ残酷記』のなかで、X感覚やA感覚とおなじように、鼻腔粘膜の感覚─N感覚というものが、あるのではないかしら? ということについて、私の考えを述べさせていただきましたけれども、私は、体じゅうの粘膜の部分、特に、鼻腔やアヌスを責められることに、つよい悦びを感じるのでございます。粘膜被虐症? とでも申すのでしょうか。 私の性生活には、A感覚とN感覚が、X感覚と同じように、いいえ、それ以上に大きなウェイトを占めているのでございます。A感覚やN感覚を夫から責められますと、私の肉体は、この上ない興奮に駆りたてられて、甘美な陶酔から、知らず知らずのうちに、自らの体を開いていってしまうのでございます。そうして、その責めが激しければ激しいほどその後の夫婦の結合に、狂おしいばかりのエクスタシーが得られるのでした。 さきほどお話ししました、牛乳責めなどのように、液体をもちいたプレイでも、ビニール管が使われますと、ほとんどお部屋を汚すことはありませんので、寝室でおこなわれますが、アヌスを責められる時には、お風呂場でおこなわれます。あたたかい浴室でのプレイは、私たちの官能をいちじるしく刺激して責めのムードはいやがうえにも高められ、私は、しびれるような悦虐の境地に、のたうち回ってしまうのでございます。 |
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恰好にされたうえ、両方の鼻の孔に、呼吸のための長いビニール管をさしこまれて、浴槽の底に、仰向けにしずめられてしまうのです。むかしの潜水夫が、長いゴム管で、船の上の手押しポンプから空気を送られて水にもぐつたことから、このように名づけられたのです。 また、『噴水』と申しますのは、顔を逆さに固定されて、水道のゴム管を片方の鼻孔に押しあて、水道の蛇口が、段々開かれていって片方の鼻の孔からまっすぐ上に噴水のように水を出させられるプレイなのでございます。 もっとも、このような浴室での責めや、はじめに、お話しました牛乳責めなどは、ずいぶん時間がかかりますので、そう度々おこなわれるわけではありません。大抵は土曜日の夜が利用されるのですけれども、健康の上にもよくないと思われますので、できるだけ差しひかえ、1ヶ月に1回か、2回ぐらい行なわれるのでございます。 最後に、ある土曜日のプレイの模様について、お話することにいたしましょう。 |
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── <三> ── |
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鼻口をかたく締めあげていた、猿ぐつわの手拭いがとられました。しかし、これ以上開けられない程、あごをいっぱいに開けられて布切れを詰められた口は、自分で布切れを押し出すこともできません。夫の指先が、グッショリと唾液を吸いこんだ布切れをつかんでズルズルと引き出しました。 他の責めのときには、猿ぐつわは必ずはめられて、おしまい迄はずされることはないのですが、鼻責めの場合だけは口で呼吸をする必要から、猿ぐつわをはずされるのでございます。 猿ぐつわがはずされて、呼吸は楽になりましたけれども、恥かしい鼻孔が、天井を向いたまま、あますところなくさらけ出されてしまいました。拷問台の上にギッチリと固定されて、縦にも横にも、まったく動かせなくなった鼻が、これから、夫の意のままに料理されるのです。 『さあ、これで仕度はできたぞ──。覚悟はいいね』 無抵抗にのびきったままの、私の咽喉を、夫は、いとおしむように、掌で撫でながら言いました。 『おねがい……その前に接吻して!』 せまりくる情感の昂ぶりに、私は、あえぎながら、いいました。 『うん、よしよし。こうかい』 夫は、畳の上に肘をついて、腹ばいになると、私の逆さまになっている顔を両手で、はさみました。 ウットリと瞼を閉ざしている私の唇を、夫の熱い唇がふさぎます。逆さまになった私の顔とまっすぐなままの夫の顔が、それぞれ反対方向をむいたまま、唇をあわせた異様な接吻! 『ム、ム、ム……』 私の舌は、根元まで完全に夫の口のなかに引きこまれてしまい、その、舌の根もちぎれるばかりの強い吸引力に、思わず、うめき声をあげてしまいました。 『さあ、お仕置の前の身体検査だ』 長い長い接吻の、官能的な陶酔を振りはらうように、夫はいいました。そして、天井をむいている私の鼻の孔に、鼻鏡をさしこんで、大きく押し拡げ、目を近づけて、中をのぞきこむのでした。 鼻責めのお仕置をされる前には、いつも、こうして、身体検査がおこなわれるのでございます。 |
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まず、鼻腔の奥の方に、脱脂綿がかたく詰められました。 鼻の孔のすぐ内側は、広い空洞になっていて、皮膚の続きになっておりますが、その奥は、やわらかい粘膜でおおわれています。夫は、私の鼻の孔に鼻鏡をさしこんで大きく押しひろげ、ピンセットを使って、粘膜の部分のできるだけ奥の方に、ていねいに脱脂綿を詰めこむのです。 どうしてこうするかと申しますと、以前にローソク責めをされた時に、鼻腔に流れこんだ大量のロウが、固まってとれなくなってしまい、大変恥かしい思いをして、お医者さまに、とり出していただいた事があるのです。それ以来、ローソク責めをされるときには、こうして、脱脂綿を詰められることになったのでございます。 直経が3糎もある、ふといローソクに、火がつけられました。ポツリとついた火芯が、だんだん大きくなり、ユラユラと灸が高くあがるのを待って、ローソクは横に倒されたのです。たちまち、熱いローソクのしずくが、ポトポトと、私の天井を向いた鼻の孔に流れこんでまいります。顔を動かして、ローソクのしずくを避けようとしても、髪の毛を、イスの脚にしっかりと結いつけられておりますのでどうすることもできません。ロウが鼻にあたって、ツーンとした熱さが、頭の芯にまで伝わってまいりました。 『ウーム……』 こらえきれない苦悶のうめき声が、私の口からもれました。 熱さに悶える私におかまいなく、夫は鼻孔の右に左に交互に、ローソクのしずくを滴せたり、またあるときは2つの孔の境に、ポトポトと落とし、左右の鼻孔に流れこむままにしたりしてローソク責めを続けるのでございます。 その内、鼻全体がジンとする程、熱くなってまいりました。頭がじーんとしびれ気が遠くなる様な悦虐のひと時! 『ウウ……、あついわ』、私はイスの下側に縛られた両掌をかたく握りしめ、足指を曲げたり反らせたりしながら、その熱さをこらえました。やがて、とけたロウが、鼻の孔にいっぱいになってきたようです。 |
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『さあ、こんどはこれにしようか』 ローソク責めの余韻が尾を引いて、ウットリと、夢うつつの境をさまよっていた私は、夫の言葉に、ハッと我にかえって、目をあけました。夫の手には、100g入りの大きな新しい練歯みがきのチューブが、しつかりと握られているではありませんか。(ああ……、こんどは歯みがきが入れられるんだわ……) |
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私は、イヤイヤと首を横に振ろうとしましたが、頭をガッチリと固定されておりますので、どうしようもありません。練歯みがきのフタがとられて、その口が、私の左側の鼻孔に、しつかりと挿しこまれてしまいました。 『さあ、いくよ』 夫の指が、チューブを押しつぶすにつれて左側の鼻腔いっぱいに練歯みがきが押しこまれてまいります。ローソクで責められて、まだ、熱くほてっている鼻に、ヒヤリと冷たく感じる練歯みがきの、異様な感触! 『ウ、ウ、ウウ……』 嫌悪のなかに、ふと、妖しい疼きのようなものが、脊髄を走りぬけました──。 私は前に、鼻の孔から鎖を入れられて口へとおされたり、左側の鼻孔から入れられた鎖を、鼻中隔の裏側をとおして、右側の鼻孔から出されたりして、各部分の寸法を計られたことがございます。その時の記録によりますと、鼻孔の入口から咽頭までは、約九糎ありましたが、鼻中隔の奥行の長さは、約六糎しかありませんでした。 つまり、私の鼻腔を、左右に隔てている鼻中隔は、奥行が六糎ほどでおしまいになり、そのうしろは、ひと続きの部屋になっているらしいのです。 鼻責めファンの方のなかには、鼻中隔へ穿孔をなさっていらっしゃる方がおられるようですけれども、私はまだ、鼻中隔への穿孔はうけておりません。それで、左側の鼻腔にしぼりこまれた練歯みがきは、その奥の、ひと続きになった部屋をとおって、右側の鼻腔に押しやられてくるのでございます。 私は目をかたくつむり鼻の奥をしっかりと閉じて練歯みがきが咽喉に入らないように一生懸命に防ぎました。 私の苦悶も意に介せず、夫は、情容赦なくチューブをしぼり続けます。あとからあとから、しぼりこまれる練歯みがきは、とうとう、反対側の鼻の孔から、外に押し出されてまいりました。 正常な方々には、全く想像もできないことかも知れませんが、この、反対側の鼻の孔から、練歯みがきが押し出される瞬間に、なんともいえない、たまらない刺激があるのでございます。 『ホーラ、出てきたぞ。みてごらん』 夫の声に、私は、かたく閉じていた目をあけました。 夫は片手で歯みがきのチューブを絞りながら片手に手鏡を持って、その様子を見せてくれるのでございます。 鏡の中に映った私の顔…あぁ〜なんという無惨、なんという凌辱でしょうか、美貌のほこりも自尊心も、こっぱみじんに吹きとばされて、そこには、無茶苦茶にじゅうりんされつくした、落花無惨な姿があったのでございます。 『ああ……ああ……』 私は口を大きくあけて、切ない呼吸をつづけながら、この地獄の責め苦に、悦虐のうめき声をあげました。 身悶えしようとしても、全身にきびしくかけられた縄目は悶える自由すら許しません。体じゅうが、すっかりしびれてしまって、何だか、自分の体でありながら自分の体でないような気がいたします。 さき程から長時間にわたって、頭を逆さに固定されておりますので、頭に血がさがって来たためでしょうか。それとも、鼻腔内いっぱいにしぼりこまれた、練歯みがきのためでしょうか。頭のなかに、真綿をいっぱい詰めこまれたように、重くなってまいりました。ほんとうに、気が遠くなるような悦楽でございます。 |
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----------(おわり)---------- |