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苦痛と快楽性倒錯の妖しいロマン
縄 と 血 の 祝 祭


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業火に焼かれる凄惨な責め地獄図絵
被虐の調教に泣き悶える白い肉塊!





被虐美の女


桂木は耽美派のカメラマンを自称している。自称だけではなく、その持異な切れ味をもつ映像作品は、一部では高い評価を受けていた。桂木の写真を熱狂的に支持し、愛好するファンもいた。

霧雨のふる日暮れどきの盛り場のはずれで、桂木は絶好のモデルを発見した。青線あとのヌードスタジオで働く由梨である。ひと目みたときから桂木は由梨に心をゆさぶられた。

おれはこの女を素材にして、ほかのカメラマンには絶対に真似のできない地獄絵図、真の悦虐世界を生みだしてやろう、と彼は決意した。彼は積極的に由梨を撮りはじめた。彼が直感したとおり由梨の肉体は日を追うごとに被虐美に輝やいていった。

由梨自身も自分の内面にひそむ被虐性に目ざめ桂木の常軌を逸した酷使に耐える様になった。

そんな或る日、桂木は城北にある廃工場の中へ由梨を連れこんだ。鉄錆の臭気が充満する建物の中で、彼は由梨をモデルに決定的な作品を撮ろうというのだった。





錆びた機械類が散乱する荒廃した背景の中におくと、由梨の裸身はいっそう魅力を増した。

そして撮影は開始され、彼は荒縄で由梨を縛りあげ、その豊満な乳房を赤錆びた機械でぎりぎり締めあげた。

由梨の肉体はたちまち陰惨な美の世界のヒロインとなって青白く輝やき、桂木のカメラは火を噴くような激しさで、苦痛と快楽の境にのたうちあえぐ由梨に肉迫し、シャッター音は鋭さを増していく。




甘美な地獄



さっきから連続している苛酷な責めに由梨はぐったりとなって木箱の上に横たわっていたが、そのショーツの中央部は熱く濡れていた。桂木は手で触れてそれを確めた。(由梨も感じているな。マゾ女として一段と成長してきた証拠だ)桂木は心の中で満足げにつぶやいた。そして、あの暗いヌードスタジオへの路地を何回か通った甲斐があったと思った。

『さあ、由梨、がんばってくれ、もうひと息だ。きょうの由梨はいつもより体が柔らかくて、すばらしいぞ』

言いながら桂木はすばやく荒縄で由梨を後ろ手に縛りあげた。

『ああ、また縛られるのね』 由梨は、青ざめた顔をかすかにあげてうめいた。

『そうだ、また縛られるんだ。その上、こんどは腹に鎖(くさり)を巻きつけてやる』

桂木は由梨の病的に細いウエストに鎖を巻きつけた。そしてクレーンの鉤(かぎ)にその鎖を引っかけ、由梨を吊り上げにかかった。

 クレーンは数個のボタンでかんたんに上下左右に操作できるようになっている。桂木の行為に由梨はもう抵抗する気力はなかった。もうろうとした意識の底で廃工場の壁の破れ目から洩れている太陽の光線を眺めていた。その光線に灼かれて身内が熱くほてっているのを感じていた。

 由梨の足先は床から二メートルほどの高さに浮き、かすかに揺れていた。ウエストを鎖で縛られた不安定な姿勢でうつぶせに宙吊りにされている由梨は、しだいに増してくる苦痛に唇を噛みしめていた。体を深く折り曲げたり、逆にそらしたりして、生きている海老のようにくねらせていた。

 桂木は夢中になってカメラを溝え、シャッターを押している。

『いいぞ、由梨、凄くきれいだ。いい顔をしている。動け、もっと悶えろ!』

 細いウエストにギリギリと過酷に食いこんでくる鎖の苦痛に、由梨の顔はいっそう悲愴の度
を加えてゆがんでいた。


『苦しいわ死にそうだわ。お腹がとても苦しいの。こんなことをされたら私のウエストは本当にくびれ切れてしまうわ。もう、たまらないわ!』

 由梨は宙に体をふるわせながらきれぎれの声で喘(あえ)いだ。

『凄いぞ、由梨。ますます魅力的になっていくぞ』

桂木は、苦痛にゆがむ由梨の裸身をみつめながら非情にシャッターを押しつづけていたが、やがて、彼女の胸と足首に荒縄をかけたし、こんどは、ハンモックを吊るように吊った。そしてウエストに食いこませた鎖だけをはずした。

 凄惨な鎖責めに由梨のウエストの皮膚にはどす黒い無残な跡が刻みこまれていた。いま由梨
の裸体はうつぶせのままで宙吊りにされている。


 彼女の大きな乳房は、肉塊が垂れ下がっているような重量感をみせて揺れている。

『苦しいか、由梨!』

 桂木は女の髪の毛を左手でつかみ、引っぱるように起こして下からのぞきこんだ。

『大丈夫よ、まだ大丈夫よ、がんばるわ』 由梨は獣のようなうなり声をあげた。

『よし』

 桂木は巨大な肉塊と化して垂れ下がっている二つの乳房のつけねのところへ、有刺鉄線をぐ
るぐると巻きつけた。このトゲのついた針金も廃工場の片隅でみつけたものだ。


ややくびれた乳房のつけ根に力をこめて深々と巻きつける。乳枷をはめこんだような形になった。そして長さ二センチほどの鉄のトゲが、さらに強く深く由梨の虐(しいた)げられた乳房を責めつけた。

 トゲの何本かが数ミリの深さで乳房に突き刺さり、幾筋かの血がにじみでていた。

『うう、ううう……』

さすがに由梨は迫力のある苦悶の声をあげた。有刺鉄線は半ば錆びているのだ。そのためにいっそう凄惨な効果をあげている。

桂木は、左右の乳枷にさらに荒縄を結び、その荒縄に重さ三キロほどの鉄の輪を吊り下げた。

由梨が苦痛に身をよじるのと同時に、その鉄の輪もゆらゆらと揺れ動いた。トゲのついた乳枷に締めあげられた乳房は、さらに無残な形に変わり、下へ下へと引き伸ばされた。

『いいぞ、由梨、顔を起こせ』

桂木は角度を計算しながらシャッターを押す。あまりの苦痛に由梨は髪をふり乱し、声をあげて泣きはじめた。

桂木のきびしい調教に痩せ細り、骨だらけ傷後だらけになってる被虐の裸身は、地獄の業火に燃かれる様に泣き悶えた。あぶら汗が流れ皮膚は燐光のように妖しい艶を放ち、汗の粒が玉となって廃工場の床に飛び散った。

『どんな気持ちだ、由梨』

『ああ、ああ、ああ』

 由梨は唇をねじまげ、ただ泣き声をあげるのみである。

(責められるというのは、苦痛だけではないわ。苦痛以外のなにかがあるわ、いま私は理屈ではなく体でそれを感じているんだわ!)

 地獄の責め苦に泣きながら、由梨は苦痛を超えた快惚の世界のなかをさまよっていた。そして性的なクライマックスさえ味わっていた。正常なセックスよりも深く感動的な快感を由梨は味わっていた。

 あまりにも強い快感に、このまま死ぬかもしれない、と由梨は思った。責められる苦痛のために死ぬのではなく、快感の激しさのために息絶えるのである。女の肉体にとってこれほど幸福な死に方はないと思えた。

 ようやく陽は西に傾きかけ、爛れたような赤い光線がこの廃工場の中へ深々とさしこんでいた。そして由梨の妖異な光芒を放つ裸身を照らしだしていた。




巨大すぎる乳房



廃工場の中で地獄のような撮影をやってから数日間は、さすがの桂木もヌードスタジオに姿を見せなかった。

だが十日ほどたつと、再び、彼はやってきた。そして二階のスタジオで彼女を裸にして縛り、写真を撮った。

由梨の腹部には廃工場での責め苦のときに刻みつけられた鎖のあとが、黒っぽい紫色になって残っていた。

しげしげと由梨の裸身をみて彼は言った。

『お前の乳房はまた一段と大きくなったな。いくら自分のものでもそれだけ大きいと苦しいだろう。胸の重さが日常生活に負担になってるんじゃないか』

彼から言われるまでもなく、そのことは由梨自身が一番よく感じている。

走ったりすればもちろん、ただ普通に歩くだけでも二つの乳房は大きく揺れる。重さのために姿勢もいつのまにか前かがみになってしまう。

体が痩せているところへ、乳房だけが不均(つり)合いに大きいのだ。あまりにも大きいので垂れ乳になっている。ブラジャーで整えたところで、どうにもならないのである。

由梨の乳房は少女時代から人並み以上に大きかったのだ。さまざまな人生の変転ののちにヌードスタジオで働くようになり、桂木と知りあった。そして乳房を中心に責められるようになってから、また急激に大きくなっている。

『すこし小さくできないものかしら。こう重くてはやりきれないわ』

 と由梨は、多少甘えたひびきをもつ声音で桂木に言った。

『そうだな、その大きさではちょっと辛いだろうな』

なんとかしてやろう、と桂木は思った。桂木の瞳の奥に怨念にも似た嗜虐の炎が静かに燃えていた。





乳房を小さくするとなると、やっぱり手術だ。桂木の知人に園田という医師がいる。あの男に頼んだらきっとうまくやってくれるに違いない、と桂木は思った。由梨のような素晴らしい素材を見たら、あの男もきっと喜ぶに違いない。

桂木は由梨に言った。

『友人に外科と美容外科を開業している医者がいる。腕も確かだという評判だ。そこへお前を紹介してやろう』

『お願いします。やっぱり桂木さんて頼りになるわ』

由梨は媚びたような目で、彼にこたえた。

数日後、由梨は園田医院を訪ずれた。桂木からすでに連絡を受けている園田は柔和な笑顔で彼女を迎え、ていねいに診察した。

『由梨さん、あなたはなんという素晴らしい人なんだろう。実はあなたのことは桂木君から色々きいていたんですよ。こうして実際にお会いしてみると、彼の話以上に魅力的な女性です。バストもすばらしいじゃありませんか。この魅力的な乳房を小さくするなんてもったいないなあ。小さくするというのは大きくするのより難しいんです。普通、乳房の整形といえば豊乳術ですからね。しかし、やってみましょう。まかせてください』

桂木と園田とはかなり親密な関係にあるらしい。医師がはじめての患者に接する態度にしては、かなり慣れ慣れしい感じであった。しかし、由梨にとっては、かえってこのほうが安心である。

2日後の夜、手術することに予定が組まれた。手術後は入院しなければならない。

当日、由梨は約束した時刻の30分前に医院へ行った。一般患者の診察治療を終えた園田と看護婦が、すでに手術の準備を終えて由梨を待っていた。看護婦は安川みどりという名の洗練された美貌の持ち主だった。年は27、8というところだろうか。

園田医師とこの看護婦の間には肉体関係があるな、と由梨は直感した。そう判断する根拠はなにもない。ただ、女の直感というやつであった。

過去において様々な手術を受けて、こう言う事には慣れてるはずの由梨であるが、それでも、やはり手術室へ入ってスカートを脱ぐ手は緊張して固くなった。乳房の手術をするのにパンティまで取ることを命じられたのである。

看護婦の安川みどりが、うっとりと由梨の体をみて言った。

『由梨さん、本当に良い体してるわ〜このバスト、このウエストなんて素晴らしいんでしょう。女の私でも惚れぼれするわ。その上整形したら益々、綺麗になって…羨ましいわ。さあ、先生にお乳を美しくしてもらいましょうねえ』

羨望の目をそそぎながら、安川みどりは由梨を手術台の上に寝かせた。そして由梨の手足を黒いゴム紐で手柄台に縛りつけた。看護婦のその手つきは、かなり嗜虐的だった。

そばでそれを眺めながら園田も目を光らせている。

私の体をみてうらやましいだなんて、ずいぶんおかしいことを言う看護婦だわ”と、由梨は不安になった。手首と足首に食いこんでいるゴム紐が痛かった。








麻酔薬がうたれた。

(私の体の中にまたメスがはいるんだわ、私のお乳はどうなるんだろうか。うまくいってくれればいいけど……)増大してくる不安に由梨はあえいだ

『さあ、はじめましょう。由梨さんがもっと魅力的になるために…。この乳房をもっとすばらしい形にしてあげますよ』

そう言う園田医師の微笑のかげに、桂木と同じ嗜虐の意志を感じて、由梨は胸の中でアッと声をあげた。だがもう遅かった。麻酔がきいてきた。下半身までが異様にだるくなってきた。




 園田はメスを握った。メスは冷たく光って由架の乳房の下部を引き裂いた。皮膚が切り裂かれる不気味な音がした。園田は大きめに10p近くも切開した。

 緊張の時間が経過すると共に処置は進み、次いでもう片方の乳房にも同様の手術が施された。





非情な共謀



 しかし、手術の結果は必ずしも成功とはいえなかった。左右の乳房の大きさのバランスがくずれてしまったのだ。左のほうが妙に小さくなって、それにしなびたような感じにもなっている。


 手術をうけたことを半ば後悔している由梨に、園田医師はもう一度やり直しをしたい、と言った。名誉と意地にかけてもこんどは成功させるから、ぜひやらせてくれ、と再手術の説得をした。

 由梨は桂木とも相談したのち、再び手術台にのぼることになった。

 こんどは両乳房の内側が大きく切開され、豊乳術が施された。

 園田は異常とも思える熱心さで、美貌の看護婦を助手にしてそれをやった。時間も前回よりは倍以上もかかった。『由梨さん、手術はうまくいきましたよ。大成功です。これでまた、由梨さんは一段と魅力的になった。芸術品といってもいいくらいの美しい体になりましたよ。あとでゆっくりと自分の乳房を観賞しなさい。うっとりされますよ。これからも手術したいところがありましたら、遠慮なく電話をください。あなたをもっともっと美しくするために、私は協力を惜しみませんよ』

 手術のあと、園田医師は自信たっぷりな笑顔で由梨に言った。

 一週間後、由梨は園田医院を退院した。しかし乳房の重みは減っていなかった。むしろ手術前より重くなっていろように思われた。

 由梨はヌードスタジオの自分の部屋の璧に貼ってある等身大の鏡の前に、改めてヌードになって立った。

重く感じるだけでなく、見た目にも左右の乳房は確かに大きくなってる。イヤ大きく整形されてるではないか。

 由梨はいつか映画でみたダイアン・ソーンの豊満きわまろ乳房を思いだし、あの女優とくらべても自分のほうがまだ大きいのではないかと思った。

 スクリーンの上で、ほかの多くの若い女たちを、非情に残酷に折檻し、虐待する彼女の成熟しきった美しい姿態は圧巻で、とりわけその乳房の巨大さはずばぬけているが、その女優の乳房よりもなおひとまわり大きいように思えたのである。

 さらに恥ずかしいのは、由梨の乳房の周囲には、こんどの手術でまた大きな傷あとができてしまったことである。しかも10p近くもあろうという大きな長い傷が、一度に4つもできてしまった。

 まるで熟れすぎた果実が、弾き割れたようなむどたらしい痕(あと)になっており、縫合(ほうごう)の針のあとまでが異様に浮かびあがっていた。

(ああ、なんというひどいながめになってしまったんだろう。目をそむけたくなるほどだわ。小さくなるどころか、私のお乳は逆にこんなに大きくなってしまった。その上こんなにも傷あとが増えてしまって……)

 等身大の鏡に映った自分の裸身に、由梨はひとりごとのようにつぶやいた

 園田医院といえば週刊誌なんかにもよく広告がでている名の通った医院であり、未熟な処置や失敗なんかあるはずがない。すると……ああ、やはりあの手術は美容整形なんかではなく私に対する責めのひとつだったんだ。それに違いないわ……。

 由梨は、園田医師のあの職業的な柔和な表情の裏側にひそんでいろ嗜虐の影を思いだした。私の手術は、桂木と園田の共謀ではなかったか。私はあの園田という医師におそろしい責めを受けたのではないだろうか。

 そこへ思いあたると、由梨は首筋に氷をあてられたような寒気を覚えた。

 このとき部屋のドアを廊下側から叩く音がした。由梨はあわてて裸体にガウンを軽く羽織り、

『はい』 と返事をした。

馴染みの客かもしれない、と思ったのだ。しかし、桂木のために体じゅうを傷だらけにされてしまった由梨に、馴染みの客なんかもう一人もいないはずだった。





傷だらけにされてしまった由梨に、馴染みの客なんかもう一人もいないはずだった。

『由梨、はいってもいいかしら。私よ、真紀よ。あんた、入院したんだって?』

 声の主は、由梨の仲間であるヌードモデルの真紀だった。

『真紀か、はいってもいいわよ』

 真紀がはいってきた。赤と黄と黒という派手な模様のガウンを着ており、下はオールヌードらしかった。

『ひさしぶりじやないの、由梨。どうだったお乳の整形? 手術して、また凄くなったんでしょう。桂木さんにはもてるし、きれいにはなるし、本当にうらやましいわ』

真紀は好奇心をむきだしにし、敵意にも似た瞳で由梨の正面に立った。由梨の盛りあがった胸のあたりを、意地悪い顔でじろじろと眺めた。

『それがね、全然きれいにならないの。どうやら私の手術、失敗したらしいわ』

真紀の迫力に由梨はたじろぎ、首を横にふった。真紀には強いレスボスの嗜好があるのだ。しかも同性を虐げて喜ぶ性癖がある。このスタジオの中で真妃は桂木と一緒になって由梨を荒縄で縛りあげ、淫虐きわまる責めプレイに歓喜したのだ。

『そんなことないわよ。やっばり前よりきれいになったわよ』

 真紀は由梨の肩から胸へ、すっと手をのばしてきた。由梨は反射的にしりぞいた。

『休んでいて悪かったわね。真紀、スタジオ忙しかったでしょう』

『忙しいはずはないでしょう、もうヌードスタジオなんか駄目よ、時代遅れよ。私も桂木さんみたいな、いいスポンサーを見つけなくちゃあ……』

『あら、あの人スポンサーなんかじゃないわ。私をモデルにして変な写真ばかり撮ってるけど、それだけの関係よ』

 実際、桂木と由梨の間に通俗的な肉体閑係は一切ないのだった。

『いいのよ今更、弁解しなくても…それより、由梨、私たちで退院祝いをしてあげようと思うんだけど、どうかしら』

 そう言うと真紀はドアをあけて階下へ怒鳴った。

『ハル代、二階へあかっておいでよ。由梨ねえさんに退院祝いをしてやるんだ』

 由梨は戦慄した。真紀の口調にはあきらかに毒があった。

 ハル代は、170p近い大女で、頭がすこしおかしい。肩幅が広く、おそろしい腕力の持ち主だった。

『なにをぐずぐずしてるんだい、ハル代。早くあがってくるんだよう!』 真紀はヒステリックにわめいた。

『はいよ、すぐ行くよう』

 返事をしてそのハル代がどすんどすんと足音をたてて階段をあがってきた。

『真紀ねえさん、本当にやる気なの?』

 女とも思えない太い声でハル代は言った。

『やるさ。さあ、由梨、これからあんたの退院祝いに私とハル代とでたっぷりヤキをいれてやるよ』

 真紀は不気味なうす笑いを浮かべながら由梨に迫った。





鞭の火花



 危険を感じた由梨はこの部屋から逃げようとした。だが、ドアはハル代の大きな体でふさがれている。ハル代はブラジャーとパンティだけの姿で、まるで女子プロレスラーといった感じである。由梨はおびえた。

『乱暴はやめて! 変なことしないでよ』

『変なことなんかしないわ。あんたの喜ぶことをしてやるのさ。さあ、ハル代、言われた通りにやるんだ!』

『はいよ』

 真紀とハル代は嗜虐の目を輝やかして由梨に襲いかかり、着ているガウンを引きちぎるように剥ぎ取った。

 巨大な乳房が無残にむきだされ、整形手術の真新しい傷あとが二人の目を射た。

『なによ、由梨、そのお乳は……前よりも大きくなってるじゃないの。おまけにそんな醜い傷あとまでつけられて…。あんた入院して何をしてきたのよ。でもいいわ、これからそのお乳の重さを忘れさせてあげるわ。私の鞭の味をうんと味わうといいわ』

 いつ用意したのか、真紀は長い革鞭を取りだしてヒュウッと鳴らした。ハル代の手には荒縄の束があった。

『ハル代、縛りな!』

 真紀は命令した。逃げようとしたが由梨の足はみじめにすくんで動かすことができなかった。

 ハル代は由梨の細い両手首をひとつにして前で縛りつけ、このスタジオの天井に打ちこんである鉤へ荒縄を引っかけて吊り上げた。左右の手首はずるずると頭上に引きあげられ、由梨の裸身は一本の棒のようにのびた。

『助けて! 真紀、ハル代ちゃん、乱暴はしないで!』

 由梨は哀願した。桂木だったらともかく、こんな二人の女にみじめな形で虐げられろのはイヤだった。

『うるさいわねえ、いくわよ!』

 真紀の力まかせの一撃は、まず左の乳房へ命中した。バシッという凄惨な音がした。

『ヒイッ!』

 由梨の口から悲鳴がふきあがったが、その悲鳴にかぶせるように真紀の鞭はつづけざまに由梨の腹部に鳴り、尻に叩きつけられた。

 見るまに鞭のあとが増えた。鞭あとの上にさらに鞭が重なって炸烈した。由梨の皮膚から火花がでそうなくらいの激しさだった。

 左右の乳房も鞭のためにむごたらしく腫れあがり、整形手術を受けたところも容赦なく打ちすえられて、大きな傷あとが青紫色に変色し、血がにじみだしている。

『私にも鞭をかしてよ』

 興奮したハル代が、真紀に代わって由梨の胸や尻に鞭の雨を浴びせた。ハル代の腕力は真紀の倍ほどもある。由梨は苦痛に身をよじり歯を食いしばって耐えた。

 やがてハル代は、長い鞭を由梨の腹部に巻きつけ、ぎりぎりと力まかせに締めつけはじめた。

『ううう、く、くるしい、やめて。ハル代ちゃん、苦しいわ。お腹の肉がちきれちゃうわ!』

『苦しくて気持ちがいいだろう。え、由梨、ほんとは気持ちがいいんだろう?』

真紀は由梨の苦悶する姿態をさげすむように横目で眺めながら今度は大きなガラス製の浣腸器を取りだした。そしてその筒の中にグリセリン液を吸入しはじめた。

『由梨、鞭の味はおいしかったろう。さあ、こんどは浣腸をしてやるよ。整形手術のときはお乳にたくさん詰め物をいれられ、オルガノーゲンを注入されてさぞ気持ちがよかっただろう。こんどは私があんたの可愛いアヌスからたっぷりとグリセリン液を注入してやるからね。ほら、道具も薬もここにちゃんと用意してあるのさ。その細いお腹をじっくりと楽しむといいよ〜』

 真紀はハル代に命じて由梨の吊り上げてある両手首の縄をすこしゆるめさせた。




そして由梨を前かがみにさせると、首の後ろに荒縄をまわし、前へ引き絞って膝の裏側と一緒に縛りつけた。由梨は立ったまま上半身を前に折られた形になり、尻だけが後ろへ突きだした。さらにウエストにも荒縄がぎりざり巻きつけられ、ハル代のバカ力で嗜虐的に絞りあげられた。

『さあ、はじめるよ』

真紀は太い浣腸器の先を、ぐさりと由梨のアヌスに突き入れた。

『アッ、いやよ真紀、やめて。もうゆるして!』

あぶら汗を流しながらの由梨の悲痛なうめきを気持ちよさそうにききながら、真妃はじわじわと浣腸器の内側の筒を押していく。腸の奥深くまで刺激されて由梨は尻をふるわせ

『ぐうッ、ぐうッ』と、奇妙な泣き声をあげた。
100t…200t…由紀は、なおも押し続ける…300t…

『く、くるしい!』

由梨は悶え泣いた。くびれきったウェストをさらに極端に荒縄で絞りあげられているので、グリセリン液の注入量の増大につれて、その下腹部だけが異様に盛りあがってきた。それにつれて、帝王切開の傷あとが不気味に浮きあがってくる。由梨の両膝はがくがくとふるえた。








『由梨、グリセリンの味もまたいいものだろう。お前のその気持ちの悪いほど細いお腹がそのうちに煮えくりかえってくるから、楽しみに待っているんだ。じやあ、私たちは下へ行ってお茶でも飲んでくるからね』

そう言うと、真紀はティッシュペーパーを丸めて由梨のアヌスに栓をした。こうしないとせっかく注入したグリセリン液が流れだしてくるのである。

由梨をそのままにして真紀とハル代はうすら笑いを浮かべながら階下へおりていった。

灼けつくような苦痛が、由梨の腹部を襲いはじめた。鞭打ちの痛みはまだ皮膚のあちこちに残り、それに加えて浣腸液のおぞましい侵略。由梨は全身あぶら汗をふきだして苦痛に悶えた。手首に食いこんでいる荒縄も苦しみを増すばかりだ。

(ああ、苦しい、本当に苦しいわ。この苦しみは桂木さんに責められているときのものとは違う。この苦痛は、ただの苦痛でしかない。快感もなければ陶酔もない。こんな苦痛だけの苦痛では耐えられないわ。桂木さんとの時は、二人の間が愛情と信頼で結ばれているんだわ。そうだわ、愛情だわ。ああ、桂木さんに責められたいわ!)

 しかしその桂木は、由梨が退院してからも姿を見せない。手術をする前に会ったきりなのだ。

 桂木さんに会いたい、会いたいわ!

 由梨は気の速くなるような苦痛の中で叫んでいた。

 階下で、二人の女のげらげら笑い合う声がした。




凄鯵!稲妻責め



 桂木はもちろん由梨の手術の経過を知っていた。園田医師と電話でくわしく話し合っているのである。

『きみの言う通りにやったよ。結局は豊乳術で前よりも大きくした。益々きみ好みの素晴らしい乳房になったよ』

 と、園田が言った。

『なに言ってるんだ、きみだってあのタイプの女が好きなくせに。そのうちに二人で由梨を責めようじやないか。いや、きみには、安川みどりと言う素晴らしい女奴隷がいたね。あの美人の看護婦も混えて、4人で思いきって凝ったプレイをするのも、面白いな…』

 と桂木は笑った。

 べつの忙しい仕事に追われて、手術後の由梨にまだ会えないでいることを、桂木は気にしていた。

 その仕事もようやく一段落した。

(今夜こそ由梨に会えるぞ)

 桂木は期待を抱きながら夜の町を、また例の『スタジオM』への暗く湿った路地をめざして歩いていた。

 夕方から雨が降りだしていた。たいした降りにはならないと天気予報では言っていたのだが、暗くなるにつれて雨足が強くなった。雷雨さえともなってきた。

 ネオン街からはずれたこのあたりは、雨が降るといっそう暗い感じになり、相変わらず人通りのすくない貧しげな路地を、桂木は急ぎ足で『スタジオM』へかけこんだ。

 店先にはちょうど由梨だけが青っぽい服を着て椅子に坐っており、ぼんやりと外の雨しぶきを眺めていた。

『やあ、』元気らしいな、由梨。この前の整形どうだった?また一段と魅力的になっただろう』

桂木は雨に濡れた肩先や腕をハンカチで拭きながら店の中へはいった。

『あら、いらっしゃい、桂木さん。雨がずいぶんひどく降ってきたわねえ』

久し振り桂木の顔を見た由梨は内心の喜びを押し隠して、わざと首を外へ伸ばして雨の降り具合を見上げた。

『早くお前のオッパイを見たいよ』

『また私、一段とオバケになってしまったわ。すごく大きくなって、ふた目と見られないくらいよ。あの園田先生っていう人、ちょっとおかしいんじゃないかしら。でもいいわ仕方がないわ、お見せするわ。ゆっくりしていってちょうだい』

由梨は愛想よく、桂木を二階の自分の部屋に案内した。

狭いながらも一応キオトスタジオの形になっていてライトの設備もあり、隅にはベッドも置いてある部屋である。

そのベッドに腰をおろした由梨は、うるんだようなまなざしでおしゃべりをはじめた。桂木は呆れたように女の顔をみつめた。由梨は無口な女だったのである。

『私ね、前にあなたが言ったこと忘れられないの。お前は責められるために生きている女だって、あなた、言ったでしょう。私ね、世の中に女は多いけど、私だけが責められる権利があるのかも知れないと思いはじめてきたの。いいえ、そうでありたいと思ってるの。それでね、恥ずかしいけど、またあなたに責められて、そのことを確かめておきたいの。それともうひとつ、この路地裏のみすぼらしいヌードスタジオの建物の中に、私という一人の女が存在したという証を残しておきたいの。お尻とオッパイだけが大きい、みじめな体をした一人の女が、おそろしい責め苦に泣き悶え、そして陶酔して生きたというあかしを、血と、あぶら汗と、涙とで印しておきたいの…』

『今夜の由梨はちょっとおかしいな』 桂木は笑いながら言った。

『おかしいのはもともとよ』 由梨も笑った。

『ほかのヌード嬢たちはどこへ行ったの。みんなお客がついたのかい?』

『今夜はこんな雨だし、皆お休みよ。どうせお客なんかこないからいいのよ。もうじきこのお店もつぶれるんじゃないかしら?あの子たちは皆ソープ嬢になりたがってるわ。それよりも、ねえ桂木さん私の言った事、分ってくれた?』

『わかったわかった。それじゃまず、手術の結果をみせてくれよ。園田さんは腕のいい外科医だし、大成功だと言ってたから、きっとすばらしくなっているはずだ。さあ、着てるものをぬいでくれよ』

『それじゃ、ぬぐわ。びっくりしないでね。みんな園田先生が悪いんだから』

由梨は甘えるようなまなざしを桂木に向けながら、青っぽい色のワンピースをするりとぬいだ。ブラジャーもとってショーツひとつになった。








『桂木さん、このお乳を見て。整形手術でこんなにされちゃったのよ。この大きな傷あとを見て。重いお乳が全然小さくならないで、手術のあとだけが一度に四つも増えちゃったのよ。それもこんなに太い、むごたらしいのが……。きっと、わざとやったのよ。園田先生が。そうとしか思えないわ。こんなひどいお乳って、世界中で私一人しかないわ。自分でもぞっとするくらいだわ』

由梨はやや強い口調でなじるように言ったが、表情には満足を浮かべて桂木の反応をみた。桂木の目が由梨の左右の乳房を異様な強さで凝視した。

『ううむ、こいつは凄(すご)い、本当に凄い。いや酷(むご)い、酷すぎる、痛ましすぎる……。だけどね、由梨、酷い、痛ましいというのは、すばらしい、美しいということでもあるんだよ。この上なく魅力的だということなんだ。さすがに園田さんだ、すばらしい芸術品だ!』




桂木は突きだした由梨の乳房を愛撫するようにぎゅうっと両手で握った。由梨の全身がぶるぶるとふるえた。

『手術のあとだけではないわ。ほかにも、あなたのモデルになってから責められつづけてきた痕が、肩にも背中にもお尻にも太腿にも体じゅうに消えずに残っているのよ。でも由梨はこんなに骸骨みたいに痩せて傷あとだらけになっている体でも、このお乳とウエストが一番好きよ。あなたに責められるこのお乳とウエストが……』

由梨は憑(つ)かれたようにうわずった声で言いながら、左右の手で自分の乳房をぎゅっと握りしめ、くびれたウエストを激しくかきむしった。

 外の道路に面しているガラス窓が、ふいにガタガタと鳴った。雨だけではなく、風も吹いてきたらしい。雨しぶきが白く、横なぐりに窓ガラスを叩いているのが見える。

 ときおり雷鳴がきこえ、遠くで、稲妻が光った。

『責めて! ねえ、桂木さん、責めて!』

 由梨は全身に媚をただよわせて桂木に迫まった。

『よし、はじめよう』

 桂木は持ってきたバッグの中から、ごわごわした荒縄とロウソクを取り出した。





『手を背中にまわせ』

『はい』

 由梨の手首を背中にねじりあげてひとつに縛り、乳房の上下に深々と食いこませて高手小手にする。

『ああ、いい気持ちだわ』

 がくりと首を折って由梨はうめいた。

 桂木はつぎにバッグの中から金槌と太い釘(くぎ)を取り出した。そして窓の上部の太い桟に、その釘を5本ほど並べて打ちこんだ。激しい雨音にまぎれて、この作業はほかの者にはわからない。

 彼は由梨のウェストに荒縄を固く巻きつけた。窓の上部の太い桟と打ちこんだ釘を利用して、由梨の体を吊りあげようというのだ。窓際における吊り責めを計画したのだ。

 それは成功した。由梨の細い体は仰向けになって吊りあがった。

 彼は窓のガラス戸をあけ放した。

『あ、つめたい!』

 雨しぶきが由梨の裸身にかかった。体を仰向けにされたままで吊られた由梨は、細い腹部をいっそうくびれさせて早くも苦しげな喘ぎをみせていた。

 桂木はバッグのなかから太いロウソクを取り出し、ライターで火をつけた。窓から吹きこんでくる風に、ライターの火は何度か消えた。だが、太いロウソクの先端にやがて火がしっかりとついた。一度火がつくとロウソクは太く炎も大きいので、風に吹かれてもなかなか消えない。

 桂木はそのロウソクを片手に握り、由梨の乳房へロウ涙を浴びせはじめる。

『熱い、熱いーッ!』

 ロウ涙の大きなしずくが、乳房の上を直撃した。由梨は声をあげ、胸をのけぞらせた。責めぬかれて痛みきっている皮膚に、間近から落とされる熱ロウはいっそうきびしく苛酷に感じられる。

 たえまなく落ちるロウ涙はたちまち左右の乳首をおおいつくした。

『どうだ、由梨』

 桂木はさらに女の肩先へ、ウエストヘ、そして下腹へとロウ涙の範囲をひろげていく。やがて彼は太いロウソクを三本同時に握り、それを女の胸の上でかざした。

ロウソクの束から白い滝のように流れ落ちてくるロウ涙に身を焼かれて、由梨は激しく裸身をけいれんさせた。

 窓から吹きこんでくる風にロウソクの炎はゆらぎ、由梨の裸身は雨に濡れた。ぎっちりと食いこんでいる荒縄は雨に濡れて縮み、いっそう凄惨な効果をあげていた。

雨に濡れながらのロウ涙と荒縄吊り責め苦に、由梨は身を揉んで苦悶しつづけた。体のあちこちが窓際にぶつかり、そのたびにごつんごつんと鈍い音をひびかせるのが、この責めの光景をいっそう非情で凄惨なものにしてた。

稲妻が近づいてきた。由梨の痛ましい裸身を更に刺し貫くように稲妻は鋭く光り雷鳴と共に二閃、三閃した。

鬼気迫まるものを桂木は感じ、カメラを構えた。稲妻に照らしだされる女の一瞬の恐怖の表情が、果たして撮れるかどうか。桂木は夢中になってシャッターを押しつづけた。





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