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りんね
輪 廻


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歩くたびに、腹の中で水が音をたてた。
無理もない、昨日来、二升にもなろうとするお水を、飲み、自らの体内で、じっくり時間をかけて、醸造してきたのだから…かっきり5分毎におとずれる激しい尿意が、安雄の顔を青ざめさせた。初めは、錐で突いたような痛みが局部に集中し、やがて下腹全体に鈍い重みが、ある種の疼痛を伴って滲透してゆくのである。堪えきれずに、その一雫がブリーフを濡らした。あまりの苦痛に、立ち止まらねばならない程であった。

俊子も今頃、苦しんでいるのだろう…なにしろ、5日間も、排便させてないのだからな…』

顔を真青にさせて堪えているであろう『俊子』の姿を想像すると、その分だけ自分の苦しみが、和らいでいくような気がした。
山手の閑静な住宅街に着いたのは、夜も10時を回っていた。仕事が手につかず、課長に白い目を向けられたことも、イライラしながら残業の2時間を過ごしたことも、これから始まる『俊子』との素晴らしい、共同作業を思えば嘘のように、心が晴れてゆくのであった。
マンションの5階の部屋に、『俊子』は住んでいた。インターホーンを押す手が、微かに震えた。『俊子』の声が聞こえるまでの、僅か数砂を、彼は数分にも、数時間にも感じた。

『どなた?』

『俺だよ!開けてくれ〜』


寝(やす)んでいたのであろう、薄いネグリジェをまとった俊子の顔はさすがに青く、生気が無いようである。
二人のプレイのために改造した広いトイレには、すでに主を待ちわびるかのように、煌々と照明が輝いていた。

『もうだめよ。早くして。漏れちゃいそうなのよ。ねえ、お願い!』

『ジタバタすんな、慌てる乞食は貰いが少ないって言うぜ。これでも大急ぎで来たんだ…一服、吸わせてくれよ』

彼がタバコを吸っている間にも、『俊子』は眉間に皺をよせ、身をくねらせている。用意してきた、もう一升の利尿剤を、安雄は更に飲みほした。体内水分の激増のために胸がムカムカした。

『さあ〜始めるか!』
はやる心を抑えるかのように、ゆっくりと『俊子』のネグリジェを剥ぎ取った…ブラジャーも、パンティも…

ドアに鍵をかけ、トイレ以外の全ての灯りを消し、彼は衣服を脱ぎすてた。一糸もまとわぬ俊子を抱きあげると、トイレに運び込み、内側からドアをロックした。防音装置が働いて、どんな物音も外部に漏れないはずであった。

俊子』を仰臥させると、ぷっくりとふくらんだ便秘腹が、切なげであった。彼女の両足を持ちあげ、体を二つ折りにする。開き気味になった両膝を、顔の所で折りたたみ、彼女に肘を抱かせた。
この一瞬々々を待ちわびていたのだ。

彼の膝はガクガク震えた。それは無謀な量の利尿剤に助長された前代未聞の激しい尿意が、迫りつつあるからでもあった。彼の目の前で丸くなり、強い照明を浴び、羞恥のポーズを晒した女の姿に、彼の血は激しく、波打ち出した。彼は、自分の状態を確認してから身構え、足を伸ばしたまま、彼女を抱き込むように両手を床についた。次に、その両手で女の足首を、ガッチリと掴み、満身の力をこめて、体を叩きつける…丸く、突き出していた女の双臀が、グッと苦痛を表現した。待ちに待ったこの一瞬、堪えに堪えた三升の丹念に、醸造された熱い、精妙な溶液が、凄まじい勢いで、居所を変え始めた。『俊子』の体は、ぶるぶる震え始めた。胸の双丘は、真赤に膨張して固くなり、子供を産んだことのない薄桃色の乳首が、ポコンと飛出し、血の気のうせた額に、べっとりと脂汗を浮かべ、ぎりぎりと歯を喰いしばって、『俊子』は堪えていた。

『ああぁぁ〜!だめよ!許して〜』

『我慢するんだ。もう少し…』

『ああああ!』

めくれあがった女の唇は、この世のものとも思えぬほどの妖しい嬌声を撥き出した。俳尿によって一旦は堪える苦痛から解放されたもの、安雄は直ちに『俊子』の便意を阻止するための恐ろしいばかりの力に呻く事になった。
凄まじい争いにも似た数分間であった。無意識に握り潰さんばかりに、『俊子』の円球を掴んでいた安雄の掌が、ガクリと力の衰えを感じとったと、同時に彼もまた、5体からすっ〜と、力が抜けるのを感じた。『俊子』の放水は、安堆の敗北であった。安堆の踏んばっていた両足が、ガックリと折れ、よろめくように尻もちをついた。

『ああー!』

絶叫をあげて、丸くなっていた『俊子』の白い体が、伸縮を始めると同時に、おびただしい量の汚物が、飛沫をあげて飛び散り、それはビニール張の床を一面に浸していった。
目くるめく数分間に疲れきった思いだが、よろよろしながら、それでも安雄は立ちあがり、壁にもたれて、ようやく体を支えた。『俊子』は夢みるような表情で、横たわっていた。口から涎が一筋、糸を引いていた。

俊子俊子!』

ぼんやりと目を開いたけれど、視点の定まらない目であった。安雄は再び尿意を感じた。『俊子』のだらしなく、伸びきっている体を目標にして彼は飛ばした。ブルッと身震いをひとつして、『俊子』は我にかえった。
ゆっくり身を起こすと『俊子』は、安雄にむしゃぶりついていた。自分と共に汚れ、自らの体を汚して、この言いようのない2人だけの世界を創り出した安雄の姿は、『俊子』にとって、まぎれもなく、キラキラ光る天使であった。



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その日は、朝から頭痛が激しかった。
咋夜、湯上がりで独りプレイをした後、不覚にも裸で寝てしまったのだ。どうやら風邪をひいたらしい。
電話で欠勤する理由を届けると、厚着をして、卵酒を飲んで、昼過ぎまで前後不覚の眠りにおちた。
久しぶりに浴びる真昼の太陽は、気持が良かった。これといったあてもなく、しかし、明確な潜在意識の作用によって、安雄の足は浅草を、めざしていた。

ウイーク・デーの昼下がりという事もあって映画街は閑散としていた。客引きの親爺の声がガランとした通りに虚ろに響いた。活動写真が渡来して以来、客引きは今も昔も枯れた口調で繰り返してきたのであろう。
ふと安雄は、明治の昔に生きているような錯覚に陥った。

画面は退屈であった。何の工夫もない、相かわらずの成人映画であった。

男は女のブラウスを脱がせ、ブラジャーをはずし、首筋から乳房へ、乳房から腋へと唇を寄せてゆく。スカートを剥ぎ、パンティに手をかける。カメラはそこで急に女の顔のクローズアップに切り換えられる。男はシャツを脱ぎズボンを脱ぐが、ブリーフを着けたままで女に覆いかぶさる。女の足指からふくらはぎへ、さらに太腿へと接吻を繰り返し、もっともらしい女の喘ぎと表情が挿入され、首を左右に動かし、何やら叫ぶ……。

延々と飽きもせずに繰り返される田舎芝居に、白々しさを感じて、安雄は顔をそらせてオヤッと思った。気付かなかったのだが、安雄のすぐ近くに、若い女が坐っている。最近では、この種の映画館にも若い女性の姿が目立つようになったが、それでもやはり相当、勇気の要ることだろう。

女はトイレに立つようである。安雄は少し間をおいて彼女の後をつけた。女は3つあるトイレの真中に入った。
カチリと、鍵をかける音がする。彼は、そおっと後のトイレに入った。幸いなことに、小さな穴がある。例によって、例の如き下手な絵が描いてあって、『入ってごらん』などと添え書きしてある。

女はハンドバッグの中からビニールの風呂敷を取り出した。中央にちょうど便器と同じ形の穴が切りとられてある。女は靴を脱いでビニールの上に立った。スカートをたくしあげ、パンティを脱いで仰臥し、両足を高く上げて、それを壁に、もたれかからせた。声を防ぐためであろう、脱ぎ捨てたパンティを丸めて口に入れた。

ハンドバッグから、3つの、『いちじく浣腸』と、赤ゴム製らしい太く短い円筒型のものを取り出した。
慣れているらしい手付きで、3つの、『いちじく浣腸器』は、たちまち空になった。次に、太い円筒で栓をした。
女は一人で、浣腸プレイを楽しんでいるのだ。
女の口から、くぐもった悲鳴が聞こえ始めた。眉間に深い縦の皺を刻み、女の手はゴム栓を必死に押えている。
3分、4分、5分。

『アゥッ!』

押し潰したような悲鳴と共に、女はとび起きた。ザァーという激しい音がした。安雄はブリーフを濡らした。
女は、ゆっくりと後始末にかかった。なにやら、つぶやいているが、はっきりとは聞きとれない。

『……どうして縛りばかり……エネマプレイを……くれればいいのに……だれか……いないかな』

女は、壁に書きなぐられた落書の上に、何か書き始めたようだが、意余って筆足らずというところであろうか、気に入らなかったと見えて、塗りつぶした様子だった。
ハンドバッグから幾枚かのフォトを取り出した。どうも浣腸プレイフォトらしい。写っている女が本人なのか他人なのかはよく判らないが、くいいるように見つめながら、片手は尻を這い始めた。
コンコンとノックの音がした。女はハッとしたように、写真をしまうと身繕いを直してノックを返した。

一番前のトイレのドアが開いたようである。バタンとドアの閉まる音を確かめて、女は細く、戸をあけて外を窺っていたが、サッと飛び出した。安雄の背後から追う視線に気付かぬ様子で、女は大急ぎで映画館を出ていった。
もうかなり歩いた。錦糸町をすぎて、まだ女は歩き続けている。

『ひょっとすると、何処かへ出かけるのかもしれない。だとすると、この追跡は失敗に終わるのだが、因ったぞ』

安雄の顔に困惑の表情が浮かび、舌打ちをした。商店街がきれて、閑静な住宅街に出た。
とあるマンションヘ女は入って5階の部屋に消えた。安雄は飛ぶように下宿へ戻った。『俊子』それが、あの女の名前であった。安雄と同じ苗字にも、何か、因縁みたいなものを感じた。品よく整った横顔は、良家のお嬢さんという感じだが、どこか崩れた感じもする。水商売の女かな?学生かな?…だが学生にしては、マンションの独り住まいは似つかわしくない…あれこれ想像をめぐらしながら安雄は長年の願望が充たされそうな期待で、子供のように、はしゃいでいた。


拝啓。突然お手紙をさしあげます、ご無礼をお許し下さい。
私は、当年とって32才になる会社員ですが、口外を憚かる羞かしい趣味を持っております。『エネマプレイ』。
私は、『エネマプレイ』以外では、心の満足を得ることが出来ないのです。これまでの数年問、一人で、『エネマプレイ』に、いそしんでまいりましたが、どうもマンネリに陥りがちで、かといって、趣味を同じくする人も、おいそれとは見つからず、悶々の毎日を送っておりましたが、ふとしたことから、あなた様の事を知りました。
どうか『エネマメイト』になって頂けませんか?あなた様と二人で、『エネマプレイ』を楽しみたいのです。
勿論、秘密は守ります。あなた様が、お望みでしたら、どんなことでも致します。新しい境地を、あなた様のお力で開きたいのです。一生一代の決心で、この手紙を書いております。是非ともお返事を頂けますよう。
吉報を、お待ち申しております。 草々


最初の一週問を、心おどらせて、返事を待った。そして、次の一過間を、イライラしながら待った…だが、返事は、なかった…いい加減、諦めかけていた1カ月程が経ってから、『俊子』からの返事が届いた。


拝復。お返事が遅れまして申し訳ございません。見も知らぬ方から、見当違いのお手紙を頂き、狼狽してしまいました。『エネマ』って何の事でございましょうか?どうやら、お人違いを、なさっていらっしゃるようですね。私には、そのような趣味はございません。今後この様な、お間違いをされませんよう。しつこくお出しになるようですと、警察の力を借りる事になりますので、念のため。
                               かしこ


『あそこが、あの女の家ではなかったのか…?そんな筈はない!この目で確かめたのだから…ちくしょうめ!』
彼は、今まさに掴みかけた宝の山が、ガラガラと音をたてて、崩れてゆくような気持がした。
今日も又、残業に疲れて安雄は下宿へ辿り着いた。

ここ3カ月程、大きなプロジェクトの推進責任者として、独りプレイも出来ないほどの重労働を課せられていたのであった。このプロジェクトが完了すれば、課長の座が約束されていたのだ。彼は、全てを忘れて、一心不乱に仕事に取り組んできた。競争各社との神経戦に、彼の体も、心も、まいっていた…刺激が必要であった。
部屋のドアをあけると、ドアの隙間から何かが落ちた。電気を付けて見ると手紙だ!差出人は『俊子』。封を切る手が、もどかしかった。


拝啓。先日は失礼致しました。恐(こわ)かったのです。見も知らぬ方から、『エネマ・メイト』の申込みを受け、気が動転してしまいました。随分、迷いました。だって私が捜し求めていた人が、現われたのですから…でも、いざそういう人が現われてみると、相手が、何処の馬の骨(ごめんなさい)か、判らないだけに不安が先にたって、あんな、お返事をしてしまいました。
失礼とは存じましたが、あなたのことを、調べさせていただきました。ある有名会社の技術者でいらっしゃることも、真面目な人柄でいらっしゃることも知りました。

私は、20才になる女ですが、目下、父母の元を離れ、服飾デザイナをしております。御存知のように、私には『エネマ』による自涜という辱かしい趣味がございます。なにぶんにも、安マンションの悲しさで、隣家へ物音が聞こえるのを恐れ、もっぱら公衆便所か、映画館のトイレで、こっそりプレイを楽しんでいましたが、心おきなく、プレイを楽しみたいというのが、長年の願望でございました。様々な浣腸器なども、雑誌で見ますが、女一人、どうにも羞かしくて買う事も出来ず、悔しい思いをしております。
こんな私で宜しければ、どうか『メイト』にして下さい。おわび旁よろしく御指導の程、お願い申し上げます。尚、仕事の都合上、月曜日なら一日中、家に居ますので、その節は、お電話下さい。
くりかえし、おわび旁、御返事申し上げます。
                            かしこ


彼が、『俊子』を訪問したのは、それから3日後のプロジェクト完了祝いの日であった。



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俊子』を知って、3カ月が過ぎたが、この3ヶ月の間は、長年の欲望に任せて集めたフォトや、各種の浣腸器を見せてやったり、その使用法を説明したりで、なかなか、安雄の思うように進展しなかった。
現代っ子らしく、脱ぎっぷりはよかったが、パンティだけは、どうしても脱がなかった。安雄を完全に信用するまで、至っていないのだろうか?気長に待とうと、彼は思った。二人のプレイのために、トイレをすっかり改造した。
押入れを取り壊し、3畳敷にして、全面に部厚い吸音板を使い、その上に、ポリウレタンを敷きつめた。更に、その上に、硬質ビニールを内装するという念の入れ方であった。ガス湯沸器を取りつけ、いつでも熱湯を利用できるようにしたし、2000tのイルリガートルもセットした。あとは、プレイあるのみであった。

100tのガラス製シリンダは、生き物のように、甘い透明なグリセリンを吸いあげてゆく。浣腸ポーズをとって待ちわびる『俊子』の顔の上に、安雄は尻をおろした。安雄の両足は、顔の両側でおりたたまれた『俊子』の両足を、更に、上から抑さえつける格好になった。安雄は、吃立した『俊子』の双臀と向かいあった。
今日も、『俊子』は、エネマ用の生ゴム製パンティを着けていた。興醒めな気分がしたが、気をとり直して、浣腸用にあけられた生ゴムパンティの穴を捜した。

『いいかい?いくよ!』

『いいわ〜』

嗜管を走り抜けた溶液が、すっかり注入されると、かなり太めのゴム栓を施し、上から梱包用のガムテープをはりつけた。安雄は立ちあがると、『俊子』の両足首を摘んで、高く持ち上げ2、3度、上下させた。これで、グリセリンは、腸内深く落下する筈である。

『ああ!もう〜』

『まだ2分だよ!我慢するんだ!』

俊子』の反応は次第に激しさを増し始めた。柔らかかった胸の双丘はピンと突き出し腰をふり出した。

『よしよし、良い子だ。もう少し我慢するんだよ』

安雄の掌は激しい蠕動を止めない『俊子』の腹を、ある時は強くある時は弱く、まるで蠕動を助長するかのように、押した。

『ああ!やめて!許して!』

狂気のように頭を振り、転々と『俊子』は転げ回った。

『ねえ…もうだめ!ああ〜』

自分でテープを剥がしにかかろうとする『俊子』の両手首を、ロープで縛りつけた。涎をたらし、髪の毛をふり乱して、芋虫のように床をころげまわる『俊子』を、安雄は冷やかに見下ろした。

『パンティを脱ぐか?』

『嫌よ!それだけはイヤ!』

『それじゃ〜いつまでも、そうしていな!』

『ああ!止めて!お願い止めて…!』

『パンティを脱ぐか?』

『脱ぐわ。脱ぐから……。あああ!』

俊子』のパンティに手をかけると一気にひき下ろした。一瞬、かばうように膝を折りまげたが、その姿勢は却って、腹を圧迫する結果になり、慌てて、また両足を伸ばした。

『ようし…許してやろう』

ガムテープを剥がすと同時に、凄まじい勢いで、『俊子』は破裂した。
今日は、どんな方法で、いこうか…?グリセリン浣腸も飽きたし、2000tの石鹸浣場もやってみた…より強い、刺激を生むためには、とっておきの、あれしかないだろう。プレイの効果を想像すると、自然に顔が綻(ほころ)んだ。途中の食料品店で、1キロ5,000円也の食塩を買い求めると、
安雄は『俊子』のマンションへ急いだ。

『今日は、うんと楽しませてあげるよ!』

『何なの?もっと強い浣腸液でも見つかったの?』

『まあ〜楽しみに待ってなよ!』

安雄は、200グラムの食塩を、1000tの熱湯に溶かした。火傷をしない程度に冷めるのを待つ間、彼は、イルリガートルを準備し、白濁の食塩水を、イルリガートルに移した。まだ、相当に熱い…浣腸ポーズをとった全裸の、『俊子』、イルリガートルのコックを開けた。

『うっ!』

俊子』は悲鳴をあげた。かなり熱い、1000tの食塩水が、俊子の腸内に奔流していった。20%の食塩水を堪えられる筈がない。たちまち悲鳴が挙った。だが、そこが安雄のとっておきだった所以(ゆえん)である。アヌスは熱さに敏感である。けれど腸には温度を感じる神経はない。熱湯に驚いた括約筋は阻止活動を始める。

襲いくる激しい便意。排泄しようとする意識と本能的に閉じようとする作用。
その作用を停止させるには腸内で食塩水の冷めるのを待つ他はない。だが、20%の食塩水によって引き起こされた便意は、一砂たりとも堪えられるものではない。自律神経と反射神経の壮烈な戦いである。
俊子』は、まんまと安雄の計略に引っ掛かったのである。排便の許可願いは、安雄にではなく、俊子自身に発せられたのである。激しい便意に屈服しようとすると、アヌスが悲鳴をあげた。

『熱(あ)つ! 熱(あ)つ!』

液が迸る度に激痛が襲い、それを柔らげようとすると、怒濤のような便意が迫った。激しい便意と、激痛の板挟みが、繰り返され、『俊子』の、たおやかな肉体は、うねりにうねった。1時間ほどもかけて、やっとのことで排泄を終わると『俊子』は、ぐったりとなった。この1時間、『俊子』の汗と脂と理性とを、根こそぎ奪いさったのである。喉がカラカラであった。無性に水が、ほしかった。ただ微動だに出来ないほどに、疲れきっていた。

『お水を、お水を下さい!』

『待ってな、すぐやるよ』

安雄は、コップに放尿した。異臭に顔を顰(しか)めながら、『俊子』はコップを空にした。

『美味しい〜もっと、もっと下さい。』

もっと強い刺激を、より大きな快楽をと求め続ける2人の行きつく先は、互いの体を浣腸器として互いの体液を浣腸液とする『エネマプレイ』であった。“人間浣腸器・ネクタール浣腸”の構想は、この様にして生まれた。
俊子』と、安雄のプレイが、頻繁になるにつれて、安雄がマンションに泊ることも多くなった。

マンションの住人たちはともかく、クリーニング屋の小僧が、疑わしげな目を向け始めたのである。
この小僧は、『俊子』の同郷の幼なじみで、ある日、『俊子』のいない朝、安雄が応待に出た事から話は大きくなった。すっかり、『俊子』に男が出来たと思い込んだその小僧が、『俊子』の両親に密告したから、たまらない…『俊子』は、一週間も経たない内に連れ戻され、2人のプレイは、意図も簡単に終わりを告げたのであった。

プレイ・メイトになるにあたって、2人はお互いの過去を探らないことを条件にしていたので、『俊子』の郷里が何処なのか?両親が、誰であるのか?安雄は知らなかったので、手紙を交わすことすら、不可能であった。
安雄の独りで、浣腸プレイに耽らざるおえない状態が、再び戻った。理想のメイト『俊子』との楽しかった日々を、思い浮かべながら…



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『ただいま。母さん、ただいま』

だが、いつものように優しい母は出迎えてはくれなかった。クラブ活動が、取止めになったことを、母は知らないのだろうか、いくぶん腹立たしいような、それでいて、悲しい様な、そんな気分で彼は2階へ上がった。ランドセルを放り出すと畳の上に寝転がった。隣の部屋で物音がする。

『「なんだ、母さん、いるんじゃないか』

はっとして彼は部屋を出た。暗い廊下に、母の部屋から明りが洩れている。

『外は、こんなに良いお天気なのに』

子供心にも、昼間の電灯の明りを、いぶかしく思った。

『母さん…』

小さな声で呼んでみたが返事がなく、ドアには鍵が掛かってなかった。彼はそおっとドアを細目に開けて息を飲んだ!いつも見る暖かそうで、大きくて…それでいて妙にとり澄ました装いの母の部屋は様相を一変していた。
外は明るいのに雨戸が閉められ、家具は片隅に押しやられてた。畳の上には広いビニールの風呂敷が敷かれ、荷造り用の太い縄や長いゴム管が乱雑に散らばり、天井の太い梁には滑車が付けられ、鉄の鎖が垂れていた。
薬局で見るような、赤いラベルを貼りつけた薬瓶や、奇怪な形のガラス器具の乱立する中に母はいた。
両足首を鎖につながれ、滑車で高く引きあげられていた。両手は大きく左右に広げられ、各々ベッドの脚に縛りつけられ、丁度、肩で逆立ちをしている様な無惨な姿で、しかも全裸だ!更に驚いたのは、こんな時間に父がいた。
いつも、『へそを出してると雷様にとられてしまうぞ〜』なんて言いながら、父も又、素裸であった。
見てはならないものを見てしまったように思って、急いで子供部屋に戻ったが、胸が激しく動悸を打っていた…
顔は真赤に火照っていた。じっとしてはいられなかった。何かに憑かれたように勝手に足が、再び、母の部屋へと向かわせた。父は太く、長い注射器のようなものを取り上げ、薬瓶の中にその先を入れた。
透明な液がガラスの中を上がってゆくのが見えた。父は、その注射器を持って、逆さに立った母の背後に回り、張り伸ばされている母の体が、ビクンと小さく動いた。母の顔は鬼のように真赤であった。ぎりぎりと歯をくいしばり、そう、まさしくそれは、鬼の形相であった。

『ウウウ! アアア!』

母の口から、聞いたこともない恐ろしい悲鳴があがった。

『辛抱するんだぞ!』

父は空になった注射器を置くと、そう言いながら鎖をおろした。

顔を左右に激しく振り、バタバタと足をならして母は苦しんでいた。一体、母がどんな悪いことをしたというのだろうか。なぜこんなお仕置を受けなければならないのだろう。優しい母の苦悶の姿に涙がポロポロ流れた。
めちゃめちゃに父が憎かった。出来ることなら、擲りつけてやりたかった。
突然、仰臥した母の腹を、父は踏みつけはじめたのだ。

『止めて! 止めてよ!』

泣きながら彼は、父に武者振りついていった。子供心にも、その行為の意味するところは朧ろに判ったのだ。
それからも数回、母の部屋からあの恐ろしい悲鳴を聞いた。ある時は、見知らぬ若い男たちが数人がかりで、母をいじめていた。近所の人々の噂も耳に入った。だが何よりも辛かったのは、同じ年代の子供たちの呵責のない罵りであった。子供というものは、人の心を推量できる程には人生経験を積んでいない。
さして意味のない揶揄のつもりであるだけに、その罵りは容赦がなかった。

『やぁい、やぁい。変態の子、やぁい』

『おまえの母さん、変態だろう』

『おまえの父さん、変態だろう』

『やぁい、やぁい。変態の子、やぁい』

彼が家出をしたのは、まだ小学生の頃であった。その足どりは、警察にすら摘めなかった。
久し振りの休日を、安雄は適ごしていた。パレストリーナを聞いて、ワインをなめて、暖かい日であった。
あれから20年、新聞配達もやったし、子守りもやった。よくまぁ〜生きてこれたものだと思う。
周囲の目を逃れるようにして、郷里を飛び出した彼は、ドン底の生活を味わってきた。
生きるためには、どんなことでもした。学問だけが彼の心を支えた。夜も眠らず、働きながら彼は大学を出た。
あれ程、忌み嫌っていたが、間違いなく彼の体にも、父と母のドス黒い血が流れていたのであった。
受験勉強と過酷な労働とは、某有名大学へ入学した時に終わりをつげ、ふっと覗いた心の隙間に、まるで、吸取紙に吸いとられる水のように、黒い欲望が侵入していった。憑かれたように、成人映画を求め、エロ本を漁った。
SM、とりわけ、『エネマプレイ』には、体がゾクゾクするほどの興奮をおぼえた。

幼い頃に垣間見た父と母とのプレイを、その一挙手一投足をも再現しようとするかのように、その種の雑誌を探してきて読みの耽りフォトを集めた。彼は若くして、一端(いっぱし)のエネマ・マニヤに成長していたのである。
横浜の黄金町に彼は、いた。そろそろ街娼の立つ時間である。なけなしの一万円を懐中に今
夜こそ童貞を捨てようと思っていた。もう何回、こうやって来たことだろう。その度に罪悪感が先にたって、逃げるように下宿へ帰っていったのだ。女に声でもかけられようものなら、もう無我夢中で走り去ったものだ。だが今夜こそ……。暗い街灯の下や、建物の陰に、ほの白い女の顔が、うかんでいる。


『泊りで、いくら?』

『1万円』

『僕、学生なんだ。まけといてよ』

『じゃ、9000円』

『初めてなんだ。教えてくれる?』

『童貞かい?うれしいね』

女は、彼の手をとって、薄汚い連れ込み宿へ連れてゆく。

『先に泊り賃だけ払っといてよ。800円さ。まあ、いいや。あたしが出しとくよ』

30ワットの電灯の下で、女は手早く衣服を脱いだ。商売がら、ブラジャーもパンティも着けてはいない。

『さあ、脱ぐんだよ。おや震えているじゃないか。優しくしてあげるよ。さあ、おいで』

女は、彼のズボンを脱がせ、ブリーフを剥ぎとると、しみだらけの煎餅蒲団へ引きずり込むようにした。

彼は、初めての女の肌に翻弄された。何回目かの交渉が終わった時に、彼は大胆になっていた。この女なら、彼の希望も満たしてくれそうに思えたのであった。一度、女の小水を飲んでみたいと思っていたのである。下宿で、はじめて自分のを飲んだ時は、その独特の臭気と味に、胸がムカムカしたが、何度か繰りかえすうちに馴れてしまった。おそるおそる、彼はいった。

『喉が乾いちゃったよ』

『水道なら廊下のつきあたりよ』

『ううん。おばさんに飲ませてほしいんだ』

『疲れちゃったわ。自分で、行きなさいよ。ね、いい子だから』

『おばさんは動かなくてもいいんだ』

『じゃ、どうしろというのよ?』

『僕がこうするから。ね、お願い』

彼は、女の太腿を抱えるようにして口を寄せた。女は驚いたように起き上がり、まじまじと彼を見て言った。

『なかなか、やるわね。でも、いいわ。童貞をもらったんだから。零(こぼ)さないでね』

温い奔流が、彼の宿願を果たしてくれた。東の空が白んでいた。彼は始めて大学をサボった。



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単調な毎日であった。
課長という職務も大したものじゃないなと、彼は思った。思いっきり暴れてやろうと思ったのに、肝心の仕事は部長に取られてしまうし、かといって第一線に出てゆける筈もなく、中途半端なポストであった。チーフとして若い連中を引張っていた頃の方が、ずっと生きがいがあった。まるで雑用係さながらの仕事に、うんざりし始めていた。

『お客様ですよ』

下宿へ帰りつくと、小母さんが告げた。

『お客さん?僕に?』

『女の方ですよ、若い椅靂な……隅におけませんねェ。ホホホ」

下卑た笑いを聞きながら、安雄は首を傾げ、2階へ急いだ。

俊子! 俊子じゃないか!』

『お待ちしておりました。』

唇を、キッとひきしめ、いくぶん青ざめた顔色の『俊子』が坐っていた。

『どうしたの?帰ってきたのかい?』

あまりの驚きと、嬉しさに、抱きつきたくなるのを、抑えるために、安雄はいそいそと茶を沸かした。

俊子』は、いぜんとして唇を結んだまま下をむいている。何だか、べそをかいたような顔つきであったが、何か決意したように、畳をいじる手を止め、彼女はキッと顔をあげた。

『兄さん!』

意外な言葉を吐いて、『俊子』は絶句した。頬を涙が、つたっている。

『なんだって?』

安雄は、思わずコップをおとした。ガチャンと音がしてガラスが砕けた。

『兄さんは、私の本当のお兄さんなの…母からは小さい時に死んだと聞かされていたけど…兄さんなのよ!』

安雄にすがりついて、『俊子』は泣きじゃくった。

俊子』の話を、要約すると次のようになる。

両親に引取られて、田舎へ帰った『俊子』は、相手の男は誰かと強く迫られた。そんな仲じゃないと、いくら言い張っても聞き入れてはもらえなかった。遂に、『俊子』は、安雄の名前と、その容貌、それに聞き覚えがあった。安雄の過去を話した。両親の顔色は、サッ〜と変わった。その夜、『俊子』は、両親の話を盗み聞いた。
小さい頃に、死んだと聞かされていた兄が、実は行方不明な事、その名前が、安雄であった事を、『俊子』は知った。安雄から、ボツリポツリと聞き出した彼の過去と、それは見事に一致した。

彼が家出をした時、両親は狂ったように捜し歩いた。新聞広告も出してみた。しかし、安雄の行方は判らず、その時、既に身ごもっていた母は、失意の中で、『俊子』を生んだと言うことである。

泣き疲れて、眠り込んだ『俊子』の寝顔を見つめながら、安雄は深い感慨に浸っていた。
何ということだ…父と母との、あの忌わしい交渉に、矢も楯もたまらなくなって、郷里を捨てた俺が、実の妹と、その忌わしい関係に陥っていたなんて…彼は自らの業の深さに、恐れ、おののいていた。
輪廻の不思議さが、心の奥深く浸透していった。無性に寂しかった。泣きたかった。俺の人生も、これで終わるのだなと本能的に、彼は知った。瀬戸内海の夕焼けは美しかった。

キラキラと波間に砕ける太陽は、まるで金の鱗をした魚の大群が、天と海との境目へ、やがて果てしない大空へと舞い上がってゆくような、童話の世界を彷彿させた。この海には、今も尚、旧日本海軍の爪痕を、体一杯に、背負った無数の小島があると言う。その中で、作戦会議が開かれたのであろう。広い地下壕の入り口には、多くの戦死者の霊を慰めようとするかのように、真赤な彼岸花が咲くそうである。

この1週間、2人は最後のプレイのために、そして永遠の眠りにつく日のために、よく食べ、よく飲んだ。そして、それらは決して、排泄されることはなかったのである。会社へは、船中から、辞表を郵送した。二人の永遠のベッドも、見つけておいた。もう誰も邪魔者はいないのである。夜陰に乗じて安雄は、小舟を漕ぎ出した。
小豆島から、約2キロ、名もない島であった。うっそうと茂る潅木を抜けると岩山に出た。岩を下ると、草木に隠れて見えないが、地下壕への入り口がある。例によって、彼岸花が咲いていた。『俊子』の手をしっかりと握ると、懐中電灯を頼りに、石の階投をおりて行く…『きゃっ!』と、叫んで、『俊子』が、しがみついた。
蝙蝠(こうもり)が、耳をかすめたのである。数十段もの石段を、おりきると、奥につながる挟い通路がある。
奥へ行くほど通路は狭くなって、ようやく大人が通れる程度である。昔の人は、軍人とは言えども、現代の人間ほどには体格が、よくなかったものと思われる。十数メートルもの長い通路を抜けると、広々とした岩室に出た。
おそらく、ここが、将軍達の仕事場となったのであろう。

部屋の隅には、すすけた古いランプが下がっていた。ライターで火をつけると結構、明るく使えるようである

安雄は、持ってきたイルリガートルに、2000tのグリセリンを満たすと、天井から吊り下げた。
太いゴム管の始動弁に嘴管をセットした。
これで、始動弁を開けば、ゴム管を通って液が流出する筈であった。

『死ぬんだね?兄さんにあげた体だもの。兄さんに抱かれて、死ねるのなら本望よ…』

俊子』は、衣服を脱いだ。
ワンピースも、ブラジャーも、パンティも取り去った。ガスと大量のネクタールと、糞便とで、二人の腹は異様なまでに膨張していた。安雄が裸になるのを手伝った。『俊子』を優しく仰臥させると、安雄は、シャガンを用意し、剃刀を取り出した。ゆっくり、ゆっくりと若草は刈りとられていった。そして、次に、安雄が仰臥した。『俊子』の剃刀を運ぶ手つきは真剣であった。用意は終わった。二人は長く太いゴム管を、お互いのアヌスに、固定具で、ガッチリと固定した。安雄は、苦しげに仰臥した。『俊子』は、頭と足とを逆にして並び、打ち合わせた通りの準備をした。

『いくよ?』

安雄は囁いた。『俊子』は肯いた。安雄の手が始動弁へ走った。あっと思う間もなく、2000tのグリセリンが、奔流となって、安雄の腸内に流れこんでいった。

『あッ、ああ!』

安雄は呻いた。極度の緊張感が押し出すように、溜めに溜めたネクタールが、水勢激しく、『俊子』を襲った。『俊子』は、予定通りに、ノドを鳴らせた。安雄の忍耐には、やがて限度がきた。2000tのグリセリンに、溶解された噴射物は、ゴム管を通して、『俊子』の腸内に移動する。

『あッ!』

俊子』は呻いた。極度の緊張感が、まき起こす現象が、『俊子』と安雄の立場を逆にして起こった。
安雄もまた予想通りの奔流に、ノドを鳴らせた。『俊子』の忍耐には、やがて限度がきた。ゴム管を通して、『俊子』に送りこんだものが、更に大量となって、送り返されてきて、安雄は呻いた。先程と同じ現象が起こった。
俊子』が呻いた。そしてまた、安雄が呻いた。二人の腸内を、交互に責めつける溶液は、少しの減量もないのである。もう何日たったのだろうか?いや、何カ月たったのだろうか?二人の意志に関係なく、怒涛のような、溶液の群れは、安雄から『俊子』へ、『俊子』から安雄へと、流れ続けたのである。
朦朧としてゆく意識の中で、二人は紛れもなく、神を見た。

 ああ! 永久浣腸!



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