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江戸残酷帳
妖異招き猫


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美女のいる茶店





新宿追分は奥州街道、甲州、青梅など諸街道筋の辻にあたっている所である。その追分の一隅に卯兵衛という男が古くから茶店をひらいていた。

卯兵衛は娘のお花と、ふたり暮らしであった。
お花は母親を、はやく失った不幸な娘だったが、13,4のころから、道ゆく人々の目をひく美しい器量に成長した。年と重ねるごとに磨き、お花は、艶やかさを増した。17歳の春を迎える頃になると、お花めあての客の数が増えた。

ちょっと足をとめて、一服しよう、お花の美しい顔をみながら茶を一ばい飲んでいこうという客が多く立ち寄り、千客万来の忙しさだ。例え、お花目当てでも、こんなに店が繁昌するのは神仏のおかげと、卯兵衛は常に、信仰をおこたらなかった。


悪い虫でもつかない内に、早く、よい聟(むこ)を、迎えたいものだと、卯兵衛は、そのための神参りにも、精をだしていた。



所が、卯兵衛の茶店にとって、ここに意外な商売仇が現われた。辻をすこし離れた場所に、同じような店が、一軒、増えたのである。その店は、若い女を3人もかかえていて、客に対する愛想のよさも卯兵衛親娘を、はるかに、上回っている。なにしろ客の注文によっては、裏の小座敷で、気にいった女と、ひとときの甘美な夢を結ばせるという怪しい商法なのだ。新店だけに客がつくまでは、茶代、酒代を極端に安くしてある。その上、女の値投までが安いのだ。新しい店ができてから、卯兵衛親娘の店は目にみえて、さびれてきた。男たちは、どうしても色気の豊富な店のほうへ足を向けてしまうのだ。こんな状態が長くつづくと、そのうちに店じまいをしなければならない。


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店をはやく閉めても、卯兵衛は心配で、なかなか眠りにつけなかった。ある夜、床の中で、うとうとしていると、ふいに枕もとで声がした。

『もしもし、ちょっとお起きになってくださいませ』

と、かわいらしい女の声である。そして、なにやら、なまぐさい風がスウッと吹いた。卯兵衛とお花は、ともに目をあけて、首をもたげた。すると、寝床と寝床の間に一匹の猫がいる。大きな白い猫である。なんだか見たような猫だと思って、卯兵衛父娘は、じつと見つめた。おどろいたことにそれは店に飾ってある招き猫だった。土で造った招き猫が、いま奥の部屋へきて両手をついて、口をきいているのだ。

卯兵衛もお花もびっくりして、腰をぬかしそうになった。たけは二尺もあろうか、十日ほど前に卯兵衛が、多摩川の宮ノ坂へ行ったとき買ってきたものだった。用たしの帰途、その近所にある猫寺といわれる豪徳寺の門前で売っていたのである。この寺が、なぜ猫寺と呼ばれて親しまれているかというと――。

ときの老中、井伊直孝が、遠乗りの途中、名だけは立流だが、草ぶかい、みすばらしい草庵の豪徳寺に、立ち寄った。家臣数名と草庵にはいるや、にわかの夕立がきた。いかに貧しい草庵でも屋根はある。その屋根のおかげで直孝主従は濡れずにすんだ。直孝に茶のもてなしをした住職が、高徳の僧であったので、直孝は感じいり、あらためて一寺を寄進した。

この井伊直孝を草庵に招き寄せたのは、寺に飼われていた一匹の猫だという噂がひろまった。門前にある花売り店の主人が、ためしに手招き猫を造って店先へ並べてみると、これは縁起がよさそうだといって、参詣人たちに飛ぶように売れた。商家の縁起棚に飾るとお客が増えて、商売が繁昌するという評判まで、ひろがった。

傘をさす猫

卯兵衛も、その評判をきいて招き猫を買った。泥を焼いてつくった、その招き猫が、いま、生きているもののように、からだを柔らかく動かして話しかけてくる。お花はふるえながら、なにか用なの、と猫にたずねた。猫は、お花さんが子どものときにいっていた雨傘と、着物が欲しい、とこたえた。

お花は、ひごろ神仏と同じように手を合わせて信仰している猫の言葉に、ふたつ返事で承知した。さっそく、お花は起きあがって、欲しいという二品をとり揃えると、猫にあてがってやった。猫は大よろこびの感情を動作にあらわし、お花にむかって、なん度も頭をさげた。そして、姿をスウッと消していった。

ここで父娘は、奇妙な幻覚から、さめたのであった。しかし翌朝になり、店をひらいたとき、昨夜のできごとが、幻覚でも夢でもなかったことに気がついた。
茶釜と並べて飾っておいた招き猫が、赤い振袖を着て、蛇の目の傘を握っているのだ。お花は、猫がなぜ、こんな真似をするのかと、おどろきと疑いの目を、みはった。朝食をすませて、店へ出てみると、猫は、こんどは傘を半開きにして、顔をかくし、からだを、くねらしている。猫のくせに、そのなりふりが、ふしぎに色っぽいのだ。

肩から腰の線の、ふくよかな姿態は、まるで人間の女のようである。この奇妙な猫の姿は、朝から往来の人たちの目にとまった。

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ちょっと見ると、猫じゃ猫じゃを踊りそうな腰つきで、化け猫じみた感じでもある。だが、無気味な気配はなく、どことなく愛嬌がある。人間が、ちょっとでも目をそらしている間に、この猫は動きを変えるのだ。

そこがまた、おもしろい。お花茶屋の招き猫は何やら仕掛けがあるらしく、愛嬌があって、おもしろいという噂がたち、客の入りがまた、よくなった。それだけではなかった。

この招き猫は天気を予言した。

傘をさっとひらくと、かならず雨が降ってくるのだ。猫が傘をひらくと同時に、お花の頭の中いっぱいに、雨、雨という言葉が満ち満ちてくる。そこでお花は、往来の人々にむかい、雨が降ってきますよ、雨が降ってきますよう、と知らせるのだ。

それをきいて家へ逆もどりする客もいるし、お花の店においてある雨傘を買って、身仕度する旅人もいた。
卯兵衛とお花は、ホッと一息ついた。奇妙な招き猫のために店が持ち直ったのである。
こうして卯兵衛の店は、ふたたび繁昌をみせて、父娘は、しあわせな日々が送れるかにみえた。

赤犬の甚太

だが、また別の不運が父娘の身にふりかかってきた。新しくできた茶店の主が、これを怨み、嫉んだのである。

ある夜、土地のならず者で赤犬の甚太という男にたのんで、卯兵衛の店を襲わせた。赤犬の甚太を兄貴分とする三人のならず者は、命じられたとおり、卯兵衛の店に押し入り、招き猫のぶちこわしにとりかかった。

しかし、そのときには猫がどこへ消えてしまったか、店さきに姿を見せなかった。

ならず者たちは、店のすみずみまで家探しをしたが、影も形も見えない。あげくの果ての腹いせに、赤犬の甚太は方針を変えた。猫なんかより、人間の娘のほうがいいと、今度はお花のからだに目をつけたのである。

『なるほど、こいつは聞きしにまさる、いい女じゃねえか。化け猫なんかを探すよりは、この娘を手ごめにしたほうが、よっぽど、おもしろいぜ』

赤犬の甚太は、淫らに光る大きな目で、寝巻姿のお花の、胸もとから腰の肉づきをなめまわす。

『いやよ、いやッ! おとっつぁん、おとっつぁん。助けて!』

本能的に危機を直感して、お花は卯兵衛に救いをもとめる。だが、甚太は乱暴にも卯兵衛の脾腹(ひばら)を、したたかに蹴りつけた。

『ううッ!』

ひと声うめいて卯兵衛は、もろくも畳の上に悶絶してしまう。

『おとっつぁん!』

泣き声をあげて卯兵衛にとりすがったお花の片手を甚太は、すばやくつかんで、ぐいと背中にねじあげた。ならず者の一人が、その甚太の手に縄を渡す。

『やい、お花といったな。かわいそうだが、縛らせてもらうぜ』

甚太はお花の両手を背中へねじあげると、きりきりと縄で縛りあげるのだ。

この男は、こんな仕事に慣れているらしくあざやかな手つきでお花を後ろ手に縛りあげた。寝巻の裾が、あらわになり、白い足が膝の上まで、さらけだした。

『あれえ、助けて、助けてえッ!』

お花は恐怖にふるえ、必死の声をあげて哀願する。その痛々しい哀願の声が、甚太をはじめとする三人の男に、いっそう淫らな刺激をあたえたのである。

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『なんて、いい声をだして泣きやがるんだ。その声をきいたら、どんな男だって観音様に参詣したくならあ』

甚太は、舌なめずりしながら、いやらしい声で言う。胸にかかった縄は、見えなくなるはど強く喰いこんで、逆に乳房の丸みをもつこりと強調しているのだ。

『まったく後ろ手に縛られた若い女の風情なんてものは、きれいにひらいた桜の花びらが風に吹かれて、散りそうでいながら必死に枝にしがみついているような味があって、なんともたまらねえ色気だぜ。無理に散らすのはもったいねえや。しばらくは、じわじわ責めつけて、きれいな娘が、肌もあらわに悶えるところを、じつくり楽しむとしようぜ』

招き猫を、ぶちこわしにきたことも忘れ、赤犬の甚太は、いまはお花の色気ばかりに心を奪われている。甚太を兄貴分とする三人の男も、負けず劣らず卑猥な欲情に憑かれた目で、無残に縛りあげられたお花の姿態をなめまわしているのだ。

『兄貴、どうせ縛るのなら、素ッ裸にむいたほうが、おもしろいぜ』

と、ならず者の一人が、唇の端から、よだれを流しながら、お花にとっては、恐ろしいことを提案する。

『そうだな。これだけの器量だ。裸にむいてじっくりと縛りあげようか』

せっかく縛りあげたのに縄を解き、お花の寝巻の紐を、ひきはがした。



四人の悪党



お花がどんなに必死の力をこめて反抗しても、欲情に狂った四人の荒くれ男の腕力にはかなわない。

寝巻をはぎ取られ赤い腰巻までもひきはがされた全裸の上に、また、ひしひしと縄がかけられていくのだった。

『お願いです、ゆるしてください。どうか、それだけは……』

どんなに泣いて哀願しても、男たちは淫欲に燃える目を赤く血走らせて、お花の素肌を責めなぶる。後ろ手に縛りあげておいてから更にまた、柱へぐるぐる巻きに縛りつけた。

四人の男の手が容赦なく、お花のすべすべして柔らかい肌を撫でまわす。

『なんとまあ、雪のように白い肌をしていやがる。茶店の娘にしておくのは、もったいねえぜ。みろよ、この内腿のやわらけえこと。ゾクゾクして、おれは気が狂いそうだ』

『助けて、助けてえ!』

つつましく盛りあがった乳房の上下に、きりきりと縄がくいこみ、その苦痛とおそろしさに、お花はもう半狂乱になって悶え泣く。

四人の悪党は、もう夢中だった。お花の両足首に、べつべつに縄をかけると柱を利用して、ぐいと足をひろげさせ、大股びらきに縛りつけたのだ。

つまり、お花の尻は、ぺったりと畳につけたままで両足をひろげ、漆をまげた形に固定してしまったのだ。
お花にとっては死よりもつらい羞恥の姿であった。

『そらよ、ど開帳だぜ』

『助けて、助けてえッ!』

泣き叫ぶ声も、もう喉がかすれてむなしくヒイヒイと鳴るだけである。

赤犬の甚太は、その可憐な顔を両手で挟みこみ、花びらのようなお花の唇へ、自分の汚い唇を押しっけると、チュウチュウ音をさせて吸いはじめた。

『む、むむむうッ!』

甚太は、お茶が苦しがって眉と眉のあいだに皺を寄せて悶える顔をみて、よろこんでいる。

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『ふん、おめえの唇の味はなんていいんだろう。おれはもう、たまらなくなってきたぜ』

そんな事を言ってお花の首を太い腕で抱きしめ、またチュウチュウと小さな花びらのような唇を吸いあげるのだ。

甚太のその痴態を目の前にしたあとの三人も黙っていない。一人はお花の乳房へ吸いつき、一人は臍のあたりを、一人は内腿のあたりを、なめまわす。

雪のように白い裸身へ、四人の汚い無頼漢が、それぞれの方向から、とびつき、勝手なところを卑しく、なめまわしているのだ。

男たちの頭が、ぶつかりあい、お花を抱きしめようとする手と手が、からまり合って、奇妙な形になった。

『むうッ、むうッ、むむむうッ!』 まだ男を知らない生娘のお花にとっては、まさに地獄責めだった。

どんなに暴れようともがいても、手は背中に固く縛りあげられ、両足は裂けるかと思うばかりに、ぎりぎりの限界まで、ひろげて縛りつけられている。四人の男の思うがままに責めなぶられるのだ。

『おい、てめえら、おれがすむまでは勝手な真似をしちゃならねえ』 ふいに、甚太が怒りだした。

ほかの三人の頭をなぐり、脇腹を蹴って、男の顔を、お花の肌から、ひきはなした。

『そんなこと言っても兄貴、こんな色の白い餅肌を目の前にして、おれたちが我慢できるわけはねえじゃねえか。早くさっさとすませて、おれたちのほうにまわしてくれよ』

ならず者の一人が、口をとがらせて甚太に言った。

『そんなにあわてるなってことよ。まあ見ていろ。おれがこれから女の責め方の手本を示してやる。まず、こうして、乳房を口にふくんで……』

甚太はそう言うと、こんどはお花の乳房に吸いついたのである。

『ヒイイッ!』 お花は顎をのけぞらせて絶叫する。

甚太は口の中いっぱいにふくんだお花の乳房を、舌でぬめぬめと愛撫する。

甚太は愛撫のつもりでも、お花にとってはこれもやはり地獄の責め苦である。

舌の先でコチョコチョとくすぐり、なめまわす。ときには歯をあてて、ぎりっと噛んだりするのだ。

『ヒイッ、ヒイッ、ヒイッ!』

噛まれたお花は、縛られた全身をふるわせて泣いた。雪よりも白い内腿の肉に痛々しくけいれんが走って、その眺めが、ほかの男たちの劣情を刺激する。

『兄貴、もうたまらねえよう、早くおれたちにまわしてくれよう!』

男たちは足をバタバタさせて、だらしのない泣き声をあげた。

『ばかやろう、がたがた騒ぐな!』

甚太は叱りとばした。そして今度は、お花の柔らかい内腿のあたりへ顔を寄せると、ガブリッと噛みついた。

『ヒイイッ!』

噛まれた苦痛よりも自分のもっとも恥ずかしい場所へ甚太の顔が、いきなり接近した事にお花は戦慄した。

『お願いです、もうやめてえ!』

一度、強く噛んでから、こんどは自分の噛んだあとを、甚太はぺろぺろと、なめまわすのだ。その感触が、また気も狂わんばかりの羞恥となって、お花を泣かせる。

『いい匂いだぜ、お花。生娘の味ってものはまったく、たまらねえや』、甚太の舌が、さらにめぴた。

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『ヒイーツ、助けてえ−ッ!』

熱いものが足の指先から脳天にまでつらぬき、お花はのけぞって絶叫した。

その声に、卯兵衛が意識をとりもどした。

『おのれ、む、娘に、なにをする!』

お花の危機をみて愕然とした卯兵衛は、よろめきながらも夢中で起きあがり、猛然と甚太に、むしゃぶりついていった。年寄りながらも、死にものぐるいである。

『このじじい、なにをしやがる。はなせ、はなしやがれ!』

生娘の内腿をむさぼっていた甚太は、卯兵衛に足を取られて、ひっくり返った。

ほかの三人の無頼漢が、甚太にむしゃぶりついた卯兵衛の手をひきはなそうと、躍起になる。だが卯兵衛は、死んでもはなすものかとばかりに、なおも、がむしゃらに甚太の腰を抱きしめた。



焼けた両限



物凄い格闘がはじまり、そのはずみに火鉢の上にかかっていた鉄瓶が、ひっくり返って灰神楽になった。

その灰神楽が、柱に縛りつけられていたお花の頭の上にまで舞いあがった。

お花は、もうもうたる灰を、からだじゅうに浴びて悲鳴をあげた。縛られているので、逃げることができないのだ。

目の中に熱い灰がしみこむ。痛みがはげしく、お花は縛られたまま、のけぞり悶えた。

と、そのとき、ニャアゴという、家じゅうにひびくような太い、うなり声がきこえた。

つぎの瞬間一匹の巨大な猫が矢の様に、この部屋の中へ飛びこんできて甚太の喉に方ブリッと噛みついた。

爪をたて、甚太の胸もとをガリガリッとひっかく。甚太ばかりではなく、ほかの三人の男の目玉を狙って鋭く爪をたて、うなり声をあげて暴れまわった。

ならず者たちはキモをつぶして、部屋じゅうを逃げまわったあげく、外へ飛びだしていった。

熱い灰で目を焼かれたお花は、その痛みに朝までころげまわって苦しんだ。朝になって医者を呼んだが、その医者も、さじを投げ、卯兵衛は、ただオロオロするばかりである。

その夜、取れないままに、卯兵衛とお花はまた、ふしぎな幻覚を同時に見た。

招き猫が前足で自分の両限をこすってる。その前足をお花の両眼へもっていくと優しく、なでまわすのである。

とても猫とは思えない、しなやかな前足の動きである。そんな動作を繰り返し繰り返し、飽きずに続けている。

こんなことが朝までつづいた。

熱い灰に焼かれたお花の目は、夢の中の招き猫の前足のおかげで、痛みもとれて快方にむかった。

完全にもとどおりの目になったお花は、翌朝、家じゅうをくまなく探しまわった。そして、よくやく猫をみつけた。
台所の片隅に転がっていたのである。猫の両眼は醜く焼けただれて見るも無残な顔つきになっていた。

お花は思わず猫を抱きあげ、もとの場所へ飾ると両手を合わせ、丁寧に礼をのべた。

その翌朝、この招き猫は、こなごなに砕けて、土間に散っていた。自分からその身を砕いたのである。
これは一種の自殺であった。

お花は涙にむせんで、命の親であるこの猫に、ふたたび手を合わせて念仏を唱えた。

お花は、泣く泣くひろい集めた猫のなきがらを持って、豪徳寺へおもむいた。

住職に回向してもらい、猫塚に埋めた。




――(おわり)――










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