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晃のショート・SHORT
責 め 肌 月 見


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責 め 肌 月 見


お吉は了海(りょうかい)の濁った眼が淫らな光を帯びて来るのを悟った。熟柿くさい息を吐きながら了海はニタリニタリといやらしい笑いを口元に浮かべているのである。

『そ、それじゃ伊之さんが怪我をしたってえのは、あたしをこんな所へ連れ出す為の罠だったんだねッ』

『えへえへッ、今ごろそれに気が付いたのじゃな。伊之助でのうて気の毒じゃが、振られつづけたこの儂(わし)の煩悩(ぼんのう)の火はお前でのうては消えぬのぢゃ。お吉、今夜は帰さぬぞよ』

『ちくしょう!あたしの身体にちょっとでも触れたら、そのいやらしい眼の玉をえぐり出してやるからッ!』




裾を踏まれて転がったお吉の手には、いつの間にか簪(かんざし)が逆手に握られている。

『うふふ、そのようにピンシャンするところが儂にはたまらねのじゃ。今のうちにうんと毒付いておくがよいぞ、もうすぐその同じ唇から極楽往生の泣き声を出させて墓場の無縁仏の回向にしてやる、うふふッ』

了海のふところから落ちた麻縄が蛇のように破れ畳を這って一瞬のうちに、お吉のからだに巻き付いてきた。

『あッ!』 叩き落された簪が月の光に蒼白く光る。

『くやしいッ!』

了海の膝がしらで背を押しっけられ、お吉は必死になって身をくねらせもがいた。ずるずると引き剥がれてゆく胸元から、夜目にも白い素肌が匂って、了海の好きどころをかき立てる。ひしひしと肌に喰い込む紐目には、その一巻き一巻きに了海のかなわぬ恋の恨みが籠っているのだ。

――ああッ、伊之さんッ――

 自由を奪われてゆく口倍しさのなかで、お吉は伊之助の名を呼んだ。

『こうしてしまえば急ぐこともあるまい、えへへッ。ゆっくり般若湯でも飲みながら生きた月見と洒落ようかい』

了海が意地の悪い言葉をのこして酒を取りに立ったあと、裸に剥かれで柱に縛られたお吉は、蒼白い月の光りのなかに人魚のように身をくねらせていた。羞恥と悩乱の脂汗をうろこのようにキラキラと光らせながら――





――(おわり)――










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